コモンのギモン(10)「不名誉な名指し」

不名誉な名指し
非常勤顧問 北村喜宣
日本の法律のなかで、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律」という法律名が規定されている条項の数は、270あります。その多くは、「廃棄物の処理及び清掃に関する法律第6条の2」というように、条文番号と一緒になっています。一方、法律名だけが規定されている例は、それほど多くありません。総務省のe-Gov法令検索を利用してリサーチしてみると、18でした。
そこでは、廃棄物処理法が、まさに「名指し」されています。それでは、どのような意味においてそうなのかなのですが、①廃棄物処理法を積極的に対象にする場合、②廃棄物処理法を積極的に対象外にする場合、の2つに分けられます。
後者からみていきましょう。たとえば、「核原料物質、核燃料物質及び原子炉の規制に関する法律」61条の2第3項と「放射性同位元素等の規制に関する法律」33条の3第3項は、それぞれの法律のもとで確認を受ければ、廃棄物処理法の適用については、核燃料物質汚染物または放射性汚染物ではない物として取り扱うと規定します。廃棄物処理法2条1項では、「放射性物質及びこれによつて汚染された物を除く」とされていますが、この適用除外の対象にはならないというのです。
前者はどうでしょうか。たとえば、環境省設置法4条1項19号や中央省庁等改革基本法24条1項3号は、環境省の所掌事務として廃棄物処理法を規定します。これらはニュートラルです。
興味深いのは、「暴力団員による不当な行為の防止に関する法律」、「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律」、公益通報者保護法です。ちょっと怖そうな法律です。いずれも別表において、廃棄物処理法違反が法律適用対象になると明記しているのです。「使用済自動車の再資源化等に関する法律」45条1項2号は、欠格要件の対象として、廃棄物処理法違反の罰金刑を受けた者を規定します。
明記されるということは、数だけではなく悪質性が高い違反が多いということなのでしょう。廃棄物処理法にとっては、実に不名誉といわなければなりませんね。削除される日が来てほしいものですが、現実には、難しそうです。