創業者の想い

History of Shibata

芝田 稔秋

顧問 弁護士

芝田 稔秋

1938年 (昭和13年)11月23日生まれ 鹿児島県奄美大島出身
1971年 弁護士登録 東京弁護士会会員 海事補佐人登録
1977年 芝田稔秋法律事務所を新橋に開設
1983年 銀座に事務所を移転、現在に至る
2017年 事務所名を「芝田総合法律事務所」に変更

・関東弁護士会連合会常務理事
・東京弁護士会公害対策委員会副委員長歴任
・(公社)全国産業廃棄物連合会顧問
・(一社)東京産業廃棄物協会顧問
 など

 著書に「産業廃棄物処理施設」、(一社)東京産業循環協会の機関誌に1980年から2014年まで34年間「よろず法律相談」として、産業廃棄物問題を連載(その後当事務所の弁護士芝田麻里が承継)。

 日報ビジネス発行の「月刊廃棄物」に2006年から2020年9月まで連載(その後当事務所の弁護士芝田麻里が承継)。 講演や企業での法令研修会の講師など多数。

1 廃棄物処理法に関わるようになった経緯
 私が弁護士になって間もない頃に、危険物としての「廃油」を扱う資格がないにもかかわらず、これを取り扱ったという「消防法違反」の国選弁護事件を担当しましたが、実態は「廃油」を荒川に不法投棄したという廃棄物処理法違反事件でした。

 その後、間もなく、高校時代の同窓会があり、廃油の焼却処理の会社の経営をしている友人と再会し、その友人の紹介で業界の方々と交流を持つようになりました。さらに、また彼から「産廃新聞社」の紹介を受け、同新聞社で3年ほど廃棄物処理法に関する記事を連載しました。当時は、廃棄物問題を住民の立場から取り扱う弁護士はいましたが、処理業者を擁護する立場から取り扱う弁護士は私以外にいなかったといってよく、これらの経緯から、産廃業界の多くの方からご相談を受けるようになりました。
2 なぜ廃棄物処理法に関わり続けたか
 平成5年に行政事件手続法が制定されました。

 この法律は、業者が何らかの許可申請などの申請行為を行った場合における行政の業者に対する接し方を規制した法律です。

 同法は廃棄物処理業に限った法律ではありませんが、例えば、①産業廃棄物の収集運搬業等の許可申請をした場合の標準処理期間を定めると同時に、②申請書が「事務所(行政)に到達したときは遅滞なく当該申請の審査を開始しなければならず」、かつ、③申請書に不備がある場合には、「速やかに、申請をした者に対し相当の期間を定めて当該申請の補正を求め、又は当該申請により求められた許認可等を拒否しなければならない。」と定めています。

 ところで、行政手続法が制定される前、産業廃棄物処理業者が、処理業の許可申請をしても、付近住民の同意書がないと許可しないどころか、許可申請書をなかなか受け付けず、受け付けても申請書に不備があることを理由に審査を開始しないなど扱い方が問題となったため、行政のあり方を改めるため、上記のような行政手続法が制定されたのでした。

 これらの一事を見てもわかるように、行政の廃棄物処理業者に対する態度は、私の目には「弱いものいじめ」と感じられました。
3 どのような意識で廃棄物処理法の問題に取り組んできたか
 廃棄物処理業は、生活のインフラであり、公害を防止し、生活環境を保全し、衛生的な生活のためになくてはならない仕事です。

 廃棄物処理法制定後もしばらくは、処理業者に対する社会全体や警察、行政までも廃棄物処理法の解釈・運用を曲げた例が多く見られたため、私は、業者側の立場を擁護することに努めました。

 まじめに廃棄物処理業を行っている業者の方は多くあり、私は、縁あって処理業界と関わるようになった弁護士として、誠実に処理業を行っている業界の力になることに、弁護士としてのやりがいや使命感を感じた、というのが私が廃棄物処理業界と関わり続けた理由です。

 誠実に廃棄物処理業に取り組んでいる業者の方達が不利に扱われることは許されないという想いで、行政事件、刑事事件等様々な事件に取り組んできました。

 たとえば、行政に対して許可申請をしたにもかかわらず、行政が様々な理由をつけて許否の結論を出さないことについて、行政の不作為の違法(行政が申請を長期間放置することは違法)という判決を得たこともあります。先ほどご紹介した行政手続法ができる前の事件です。これらの行政の不作為について何度も行政の責任を追及した結果、行政手続法が制定されたといえます。

 また刑事事件では、例えば、不法投棄が行われると、行政も警察も、当初は、不法投棄をした業者が悪いとしか見ませんでした。しかし、不法投棄せざるを得なかったのは、処理費用が不当に安かったなど排出事業者の責任と考えられる面があり、これらを不法投棄が行われた理由の一端として追及しました。

 また、工場廃液の処理中に、廃液で業者の従業員がやけどを負ったり、爆発して怪我を負ったりする事案は、排出事業者が産廃の成分を予め明らかにしないことが原因であるケースも多く、排出事業者の産業廃棄物の処理について、もっと厳しく自覚させる必要性を強く訴えたものでした。

 私が廃棄物処理法の問題に取り組んで以来、多くの刑事事件や行政事件での業者側の活動を通じて、行政手続法の制定、排出事業者の責任の強化(刑事罰の制定)などにつながったという思いがあり、一つの達成感があります。

 これは、もちろん私一人の力によって成し遂げたことではなく、多くの処理業者をはじめとする先人達の努力が実を結んだ結果といえるでしょう。
4 これからの処理業界に期待すること
 今や、廃棄物処理業界は資源循環業界へとなり、環境問題に対する社会の意識も大きく変わりました。また、廃棄物の問題は、日本だけでなく世界の資源問題や環境問題に直結します。日本は国土が狭いゆえに、廃棄物処理の高度な技術を磨いてきました。日本の廃棄物処理に携わる方々が、そのノウハウと技術をもって日本や世界の資源問題や環境問題の解決に貢献していってほしいと願っています。

 また、当事務所はそのような廃棄物処理業界・資源循環処理業界の方達を全力でサポートしていける事務所でありたいと願っています。