INDUST2025年12月号に「令和7年7月14日第二次キンキクリーンセンター事件最高裁判決」が掲載されました
全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2025年12月号に「令和7年7月14日第二次キンキクリーンセンター事件最高裁判決」が掲載されました。
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福井県敦賀市と排出自治体との間で、処分未了廃棄物の対策費用の支払義務が争われたキンキクリーンセンター事件について、令和7年7月14日、最高裁判決が示されました。結論として、第一次訴訟地裁判決、第二次訴訟地裁判決、そして今回の最高裁判決が、いずれも排出自治体の支払義務を認めました。
事件の全体像
福井県敦賀市のキンキクリーンセンター最終処分場(許可容量9万㎥)に、処分予定容量の10倍以上となる119万㎥の廃棄物が搬入され、全量が不法投棄と認定されました。
搬入廃棄物の7割が産業廃棄物、3割が一般廃棄物と認定され、福井県が全量の処理費用を負担した後、一般廃棄物処理費用相当額19億9948万円を敦賀市に請求しました。敦賀市は福井県に支払った後、約60の排出自治体に費用負担を請求しましたが、一部の自治体が支払いを拒否したため、敦賀市が訴訟を提起しました。
「事務管理」とは
事務管理とは、民法上の制度で、「他人の事務」を義務もないのに行うことをいいます(民法697条第1項)。例えば、頼まれたわけでもないのに病人を病院に連れて行く行為などが該当します。
事務管理が成立した場合、管理者が支出した費用について一定の条件のもとに償還請求できます(民法702条第1項)。本件では、敦賀市が事務管理者として各排出自治体に対して費用償還請求権を有するかが争われました。
第一次訴訟
⑴ 問題の所在
廃棄物が不適正処理された場合、まず責任を負うべきは不適正処理者または不法投棄者です。それらの者に資力がない場合、廃掃法は、法令違反のある排出事業者や帰責性のある排出事業者に責任を負わせています(法第19条の5、第19条の6)。
しかし、本件の各排出自治体については法令違反ないし帰責性があるかは明らかにされていません。そこで、帰責性を要求されない事務管理責任を追及する方策が採用されたと思われます。
⑵ 原告(敦賀市)の請求
敦賀市は、排出自治体が一般廃棄物について統括的責任を負っており、支障除去等の包括的措置義務を負うことから、これを敦賀市が代わって行うことは事務管理に当たると主張しました。
⑶ 第一次訴訟第一審裁判所の判断(福井地方裁判所平成29年9月27日)
福井地方裁判所は、自治体は「一般廃棄物の処理についての統括的な責任」を負っており、この統括的責任を全うするために、排出自治体は「支障除去等の包括的措置義務」を負うとしました。
その上で、各排出自治体はこの包括的措置義務を負っているため、これを敦賀市が代わって行うことは事務管理に当たり、敦賀市は各排出自治体に対して事務管理に基づく費用償還請求権を行使できるとしました。
⑷ 第一次第一審判決の問題点
各排出事業者に統括的責任に基づく包括的措置義務があるとすると、排出事業者は廃掃法上の責任を尽くしても事務管理責任を負わなければならないという帰結が導かれるおそれがあります。
そうであるとすると、排出事業者が廃掃法上の責任を尽くすことの意義が不明確にならないか、統括的責任を負うのは自治体に限るのか民間の排出事業者も負うのかについて疑問が残りました。控訴審において和解が成立したため、高裁判決が出ることはありませんでした。
第二次訴訟
敦賀市を原告、南那須組合等を被告として第二次訴訟が提起されました。争点は第一次訴訟と同様、事務管理に基づく費用償還請求が認められるかです。
⑴ 第二次訴訟第一審判決(福井地方裁判所令和3年3月29日)
第一審判決は、第一次訴訟の福井地方裁判所と同様の理由で、事務管理に基づく費用償還請求権を認めました。
⑵ 第二次控訴審判決(名古屋高裁金沢支部令和4年12月7日)
名古屋高裁金沢支部は、第一次訴訟第一審から認められていた事務管理に基づく費用償還請求自体を否定しました。
同判決は、自治体が一般廃棄物処理について統括的責任を負うことは認めましたが、包括的措置義務については否定しました。その理由として、「地方公共団体の権限が及ぶ地理的範囲は、原則としてその区域内に限られる」として、排出自治体は他の自治体で不適正処理された廃棄物に対して具体的措置を行う権限がなく、「措置を命ずる権限がないにもかかわらず、自ら履行する術がないにもかかわらず、必要な措置を講ずる義務を負わせることは、排出自治体に不可能を強いるものである」としました。
⑶ 令和7年7月14日 第二次訴訟最高裁判決
最高裁は、排出自治体の事務管理責任を肯定しました。
一般廃棄物処理に対する市町村の責任を認める廃掃法上の規定は、「市町村が市町村以外の者に委託して当該市町村の区域外で行った一般廃棄物の処分が一般廃棄物処理基準に適合せず、これに起因して生活環境の保全上支障が生じ又は生ずるおそれがある場合も当然に想定している」とし、委託をした市町村が「自らその支障の除去等の措置を講ずる必要がある」としました。
また、委託をした市町村は「個々の排出者に代わって一般廃棄物の適正な処理に関する責任を負う」ものであり、処理を委託することによって「その区域内において処分を行うことに伴う様々な事実上の負担を免れるという利益を得ている」ことから、「本来的にその支障の除去等の措置を講ずべき地位にある」とし、「そのように解することが関係市町村間の衡平にもかなう」として、「その支障の除去等の措置を講ずる法的義務を負う」としました。
結論として、「立地市町村がその支障の除去等の措置を講じたときは、当該立地市町村が上記委託をした市町村の事務の管理をしたものとして、事務管理が成立し得ると解するのが相当である」としました。
解説
立地自治体の区域外で不適正処理が行われ、立地自治体が支障の除去等の措置を行った場合における排出自治体の事務管理責任について、最高裁がこれを肯定したことにより一つの解決をみました。
第一次訴訟一審判決時より問題となった「排出事業者の事務管理責任」については、最高裁が同責任の根拠を市町村の適正な処理責任に求めていることから、廃掃法上の排出事業者責任を果たした民間の排出事業者について認めたものではないと考えられます。
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