INDUST2026年1月号に「廃棄物処理業の更新許可義務付け?一般廃棄物収集運搬業の更新許可を認めた福岡地裁判決(令和7年5月14日福岡地方裁判所)」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。

2026年1月号に「廃棄物処理業の更新許可義務付け?一般廃棄物収集運搬業の更新許可を認めた福岡地裁判決(令和7年5月14日福岡地方裁判所)」が掲載されました。
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 一般廃棄物処理業や浄化槽清掃業の許可更新が不許可とされた場合、事業者は取消訴訟を提起することができます。しかし、仮に取消判決を得たとしても、行政庁が再度審査を行い、再び不許可とする可能性が残されています。そのため、事業者としては不許可処分の取消しだけでなく、更新許可処分を行うよう義務付けを求めたいところです。しかし、廃掃法上の許可・不許可の判断は行政庁の裁量に委ねられているため、裁判所が許可を義務付けることは理論的に困難と考えられてきました。
 このような状況の中、令和7年5月14日に福岡地方裁判所において、一般廃棄物収集運搬業の許可更新に対する不許可処分について、不許可処分を違法として取り消すとともに、許可更新を義務付ける判決が下されました。

事件の概要
 事案の経緯としましては、原告会社Xは8つの市町村によって設立された一部事務組合Yより、一般廃棄物(し尿及びし尿浄化槽汚泥)収集運搬業の許可及び浄化槽清掃業の許可を受けて業務を行っていました。
 令和6年2月及び3月にXが更新申請を行ったところ、Yは2点を理由として、廃棄物処理法7条5項4号チ及び浄化槽法36条2号ホ所定の「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」、いわゆる「おそれ条項」に該当するとして、更新を不許可とし、既存の許可も取り消しました。

 理由の第1点目は、X社代表者Aが令和4年8月にY組合長Zに対して10万円を交付しており、このことが「おそれ条項」に該当するというものでした。
 理由の第2点目は、X社が令和4年10月及び令和5年10月に2度にわたり、浄化槽清掃業務を行っていないにもかかわらず、同一顧客に対して請求書を送付するという過誤請求を行っており、このような行為は住民のX社に対する信頼のみならず、X社に委託したY組合に対する信頼を毀損する問題行為であり、浄化槽清掃業務の公的性格からして看過できるものではないというものでした。
 これに対して、X社から本件各許可取消処分及び更新許可申請不許可処分の取消しを求めるとともに、更新許可申請に対する許可処分の義務付けを求める訴訟が提起されました。

「義務付けを求める訴訟」とは
 「義務付けを求める訴訟」とは、裁判所に対して、裁判所が行政に対して一定の処分を行うよう命じる判決を行うことを求める訴訟類型です。この裁判所が行政に対して一定の処分を行うよう命じる判決を求める訴訟類型を「義務付けを求める訴訟」あるいは「義務付け訴訟」といいます。従前、義務付け訴訟について裁判所は非常に消極的でしたが、2004年に制度として法定されました。行政処分を取り消すだけでは当事者の権利が救済されないと考えられるなど、一定の要件を満たす場合に認められることとなっています。

 本件のような更新許可申請に対する不許可処分が行われた場合において許可更新の義務付け訴訟が行われた場合、いわゆる「申請型義務付け訴訟」においては、義務付け請求が認められるために3つの要件が必要とされています。第1に、処分または裁決を求める法令上の根拠があること、第2に、重大な損害を生ずるおそれがあること、第3に、処分をしないことがその裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを濫用することとなること、です。

 更新許可申請不許可処分が行われた場合、不許可処分を争うことは行政事件訴訟法第3条第1項により認められていますので、第1の要件を満たします。また、当該会社は従前の許可の有効期間を経過した後、業務を行うことはできなくなりますから、処分により「重大な損害を生ずるおそれがある」といえ、第2の要件も満たすでしょう。では、第3の要件である「処分をしないことがその裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを濫用することとなること」についてはどうでしょうか。本件で問題となったのもこの点でした。廃掃法上の許可を行うことは、通常、行政の判断に委ねられているといえます。廃掃法上の行政の「許可更新をしない」という判断に対して、その判断が「裁量権の範囲を逸脱しまたはこれを濫用」しているといえるかどうかが争点となりました。

裁判所の判断(福岡地裁令和7年5月14日判決)
⑴ 廃掃法上の行政の判断が「裁量権の範囲を逸脱し又はこれを濫用」したものであると判断することができるか

 裁判所は、廃掃法の「おそれ条項」該当性の判断は、申請者の資質、社会的信用、事業の状況等の諸般の事情を審査する市町村長の合理的な裁量に委ねられているとしました。ただし、不許可処分が重要な事実の基礎を欠き、または社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱・濫用してされた場合には違法になるという判断基準を示しました。

⑵ 本件処分が重要な事実の基礎を欠き、又は社会観念上著しく妥当性を欠き、裁量権の範囲を逸脱し、又はこれを濫用してされたと認められるか
ア 本件現金供与行為が「おそれ条項」に該当するか

 裁判所は、Y組合長ZがX社の親族間の遺産分割協議について相談に応じ調整を行っていたこと、X社代表者Aが現金10万円とともに遺言無効確認訴訟の判決書も交付していたことなどの事実を認定しました。これらから、現金供与はX社内部の紛争に関する相談への謝礼であり、「業務に関する」不正・不誠実な行為には該当しないと判断しました。

イ 本件過誤請求が「おそれ条項」に該当するか
 裁判所は、過誤請求が「おそれ条項」該当性判断の要素となることは認めました。しかし、取引先約2000件中の1名に対する2年間で約6万円の過失による請求であること、発覚後直ちに謝罪・返金したこと、人為的要因でありシステム改善で解消可能であることなどを考慮し、その問題性は限定的であると評価しました。

ウ X社の「おそれ条項」該当性
 裁判所は、現金供与と過誤請求の事実をもってX社を「おそれ条項」に該当するとした本件処分について、重視すべきでない考慮要素を重視し、考慮した事項の評価が明らかに合理性を欠いており、当然考慮すべき事項を十分考慮していないため、社会通念に照らし著しく妥当性を欠くと判断しました。したがって、本件処分は裁量権の範囲を逸脱・濫用したものとして違法であるとしました。

エ 本件義務付けの訴えについて(義務付け判決をすべきか)
 裁判所は、全証拠を検討しても他にX社の更新許可を拒否すべき事情が認められないことから、Y組合長Zが更新許可をしないことは裁量権の範囲を超えまたは濫用になると認められるとし、行政事件訴訟法37条の3第5項に基づき、Y組合長Zに対して更新許可をすべき旨を命じました。

解説
 本判決は、廃掃法上の許可更新を義務付けた初めての判決であり、極めて画期的なものです。従来、廃掃法上の許可判断は行政の裁量に委ねられており、不許可処分が取り消されても、許可については再度行政の審査判断が必要と考えられていました。本判決は、一定の要件のもとでは義務付け判決もありうることを明らかにしました。
 義務付けが認められた要件として、まず本件では不許可理由とされた事実が欠格事由の根拠として不十分であり、他に不許可事由も存在しないことから、許可する以外の選択肢がない状態であると判断されたことが挙げられます。この場合、行政の裁量権を考慮する必要がありません。次に、本件が新規申請ではなく更新申請であり、X社には既に適法に営業してきた実績があり、更新拒否により事業継続が不可能となるという事情も考慮されたと思われます。
 本件は「おそれ条項」該当性のみを理由とした「許可取消」及び「更新不許可」の事例として訴訟前から注目されていました。行政は安易な「おそれ条項」判断とならないよう留意すべきです。また、本判決は地裁判決であり、今後の展開が注目されます。

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