コモンのギモン(23)「同じく犬の死体でも」
「同じく犬の死体でも」
非常勤顧問 北村喜宣
目の前にある犬の死体。廃棄物処理法のもとでの「廃棄物」を考えるひとつの素材を提供しています。
それがペットであった場合、その死体は、廃棄物ではないとされています。というのも、占有者である飼い主にとって、供養の対象になるものだからです。たしかに、愛犬が不幸にも死んでしまったとき、40リットルのポリ袋に入れて一般ごみとしては出さないのが通例です。動物霊園事業者のところに持ち込んで火葬してもらい、骨を持ち帰って庭に埋葬するなどして、想い出と一緒に過ごすでしょう。そのかぎりにおいて、焼骨についても、廃棄物とはみなされません。
廃棄物処理法上の廃棄物ではないとなると、火葬施設は「一般廃棄物処理施設」ではなくなりますので、同法の対象外です。そうなると、大気汚染防止法の対象外にもなるため、法律上はノールールになります。このため、市町村によっては、悪臭やばい煙の発生から生活環境を保全する必要から、ペット葬祭施設設置規制条例を制定して、許可制にしているところもあります。
ペットの死体が廃棄物ではないというのは、飼い主にとって不要と観念できないからです。しかし、最初から「焼骨は処分しておいてください」とされていると、飼い主にとっても不要となるために、廃棄物になる可能性があります。委託時に、占有権も所有権も放棄されていると考えられます。そうなると、「火葬という事業活動に伴って発生した燃え殻」ですから、産業廃棄物ですね。環境省大臣官房廃棄物・リサイクル対策部産業廃棄物課長通知平成28年環産発第1606021号は、かつて「ペットの死体だから廃棄物でない」としていた整理を、このようにやや厳格化しました。
一方、飼い主がいない犬が車にはねられて道路上に放置されているような場合、道路管理者としては、これを回収する必要があります。同じく犬の死体ですが、供養の対象になるわけではありません。たんなる邪魔者であり不要物です。このため、道路管理者との関係で、事業系一般廃棄物になります。
廃棄物処理法2条1項は、「廃棄物」を定義します。「不要物」は、その中心的概念です。「要るか要らないか」となれば、「誰にとって」が問題になります。いわゆる総合判断説において「占有者の意思」が重要な要素となっているのには、理由があるのです。これを悪用して廃棄物ではないと主張される場合もありますが、やはり基本は、「要るか要らないか」であると感じます。
