こわ~い欠格要件の連鎖(欠格要件シリーズ⑥)
「連鎖的取消」という言葉を聞いたことがあるでしょうか。
廃棄物処理業を営む者にとって最も恐ろしいのは、
該当してしまったら最後、どんなに優良な大きな企業でも、
すべての都道府県における許可が
一般廃棄物処理業であると産業廃棄物処理業であるとを問わず、
一発で許可取消に至ってしまう「欠格要件」であると思います。
欠格要件の連鎖とは(H22改正前)
平成22年廃棄物改正法以前には、
グループ会社のうちの欠格要件に該当した場合に、
欠格要件に該当した会社と他のグループ会社の役員が共通する場合、
役員が共通する限りすべての会社の許可が取り消されてしまうことに
制度的になっており「欠格要件の無限連鎖」と恐れられていました。
このような欠格要件の無限連鎖による許可取消は、
行き過ぎた規制であるとされ、平成22年改正によって、
欠格要件が連鎖するのは、一定の場合にとどめられました。
かつ、連鎖も一時連鎖までに制限されるようになりました。
ではなぜそもそも欠格要件が連鎖するようになったのでしょうか。
このような無限連鎖的取消という事態が発生するに至ったのは、
平成15年改正により「義務的取消」が採用されたためでした
(法第14条の3の2第1項柱書)。
すなわち、平成15年改正前は、
処理業者に廃棄物処理法違反があった場合、
都道府県知事は、当該処理業者の「許可を取り消すことができる」
とされていました(平成15年改正前の法第14条の3)。
ところが、平成15年改正法により、
欠格要件に該当するに至った場合には、
都道府県知事は、「その許可を取り消さなければならない。」
とされました(平成15年改正法第14条の3の2第1項柱書)。
これを、「裁量的取消」から「義務的取消」に改められたといわれています。
この結果、欠格要件に該当すれば常に許可取消としなければならないため、
役員を共通にする限り、欠格要件に該当する連鎖的取消が発生するようになったのです。
これを防ぐためには、グループ会社間で役員が共通しないようにするしかありません。
その他、欠格要件の連鎖的を防ぐためには、会社をホールディングス化するなどの
方法があります。
このような欠格要件の無限連鎖に関し得ては厳しすぎるとの批判が多くあり、
平成22年改正により、欠格要件の連鎖は
重大な事件に限って連鎖することとなり、また、
第一次連鎖に限られることとなりました。
連鎖が制限されたとはいえ、無限連鎖のショックは大きく、
未だに欠格要件及び連鎖的取消が廃棄物処理業を営む方にとっては
もっとも恐ろしいものであると思われます。
連鎖的取消に対する対策といえば、
役員を共通にしないこと
ホールディングスを作ることなどが考えられますが、
最も基本的な対策は、会社が従業員を含め、廃掃法を理解し
適正処理につとめることであるといえます。
…とはいえ、廃掃法の理解が難しいのですが…。
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