「みなし役員」とは(欠格要件シリーズ➃)

「みなし役員」とは何でしょうか。
「みなし役員」とは、廃棄物処理法上、「役員とみなされる者」のことです。

では、「役員とみなされる者」とは何でしょうか。

会社は、「役員」によって経営されます(会社法348条2項)。

会社法上、「役員」とは、取締役、監査役、
会計参与のことをいいますが(会社法329条1項)、
廃棄物処理法上は、取締役、監査役、会計参与の他、
「法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役又は
これらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者
も「役員」に含まれるとされています。
また、これは
相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わない
とされています(法7条5項4号ホ、14条5項2号イ)。

これらの会社法上の役員ではないにもかかわらず
廃棄物処理法上「役員」として扱われる者を「みなし役員」
といいます。

「みなし役員」が設けられた趣旨

「役員」に欠格要件が定められているのは、
適正処理を期待できないと認められる者を類型化し、
これらの者を廃棄物処理業界に参入できないとすることによって
廃棄物処理業界をクリーンに保ち、
適正処理を保とうとするところに趣旨があります。

そして、法は、役員が欠格要件に該当した場合、
会社も欠格要件する(法14条5項2号ニ)とすることによって、
会社の経営を適正に保とうとしています。

「役員」の範囲を、会社法上の役員と
「同等の支配力を有すると認められる者」にまで広げたのは、
会社に対して実質的に支配力を有する者が、欠格要件に該当し、
あるいは該当する可能性がある場合、形式的に「役員」を
辞任し、実質的には会社経営を支配することを避けるためです。

たとえば、ある会社の代表者が暴行事件を起こして欠格要件に
該当したとします。
しかし、役員を辞任さえすれば、欠格要件に該当しない
とすれば、役員を辞任して実質的には会社を経営し続けることが
できることになります。

そこで、実質的には役員と「同等の支配力を有すると認められる者」
についても欠格要件に該当するとすることによって、
実質的支配者が形式的に役員を辞任すること等によって
会社経営に支配力を及すことを忌避することによって
会社経営の適性を保とうとしたものです。

この「みなし役員」に関する規定は「黒幕規定」ともいわれます。

「みなし役員」に該当する者

では、具体的には、どのような者が「みなし役員」に該当するでしょうか。

① かつての代表取締役

前述のように、かつて代表取締役だった者が欠格要件に該当することとなったため
役員を辞任した後も会社経営に対して実質的支配力を有する場合、
「みなし役員」に該当するとされます。

その結果、その者が会社経営に関与している場合には、
欠格要件に該当する「役員」が会社経営に関与していると判断され、
会社の許可が取り消されます。

② 反社会的勢力

反社会的勢力が、会社経営に実質的な支配力を有している場合
(いわゆる「金主」、会社がフロント企業である場合)、
当該支配力を有する者が「役員」とみなされ、会社の許可が取り消されます。

廃棄物処理法は、反社会的勢力を強く警戒しているといえます。

③ 5%以上保有株主

➊ 5%以上保有株主が「みなし役員」とされる理由

会社の株式を5%以上保有する株主についても
「みなし役員」に含まれるとされています。

すなわち、株式会社の経営は株主総会における
保有株式数に応じた議決権の多数決で決定されますが、
株式会社において5%以上の株式を有しているということは、
会社に対して一定の経営に対する支配力を有すると解されるためです。

なぜ、5%以上保有株主を「みなし役員」とするかについて
明文の規定はありません。

もっとも、5%以上株主については、
廃棄物処理法上の許可申請の際に提出すべき資料の中に、
「氏名又は名称、住所及び…
株式の数又は当該出資をしている者のなした出資の金額」
を届け出るべきこととされており(規則第9条の2第1項第9号)、
廃棄物処理法が5%以上保有株主については
把握すべき存在と規定していることから、
それらの者が5%以上の株を保有しているときは、
「みなし役員」として欠格要件に該当するときには
法人も欠格要件に該当することとしているものと解されています。

❷ 5%以上保有株主が「みなし役員」とされる場合

ただ、5%以上保有株主については、
「常に役員とみなされる」というわけではないと解されます。

5%以上の株式を保有するに至った経緯、
現在その者が会社に対して有する支配力の程度等を勘案したうえで
「役員と同等以上の支配力」を有するかどうかを決するべきである考えます。

❸ 5%以上保有株主が存在することの危険性と対策

令和4年(2022年)の行政処分の状況を調べたところ、
実際にも、5%以上保有株主が刑法第208条 (暴行罪)によって
罰金を受けたことにより当該株主が欠格要件に該当し、
これにより会社の許可が取り消された例がありました。

これは、会社が役員の欠格要件該当性を適切に把握していれば
会社の許可取消の事態は免れたのではないかと考えられます。

廃棄物処理業を営む会社としては、自社の株主の持ち株比率を把握し、
5%以上保有株主に対しては、
役員と同様の廃掃法の知識の教育と管理が必要であるといえます。

さらにいえば、会社の危機管理として、
できるだけ役員および及び株主の数を減じ、
欠格要件に該当する可能性がある者を減じておくことが理想的です。

株主の相続が発生した際などは、
株式譲渡制限がかかっている株式であっても
相続人の数だけ株式が分散されていくことになりますので、
その注意と対策が必要です。 

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