コモンのギモン(3)「司法試験とプラ新法」

「司法試験とプラ新法」

非常勤顧問 北村喜宣

 従来のリサイクル関係法は、容器包装に着目する容リ法のように、いわば「排出品目タテワリ主義」でした。これに対して、2021年に制定されたプラスチック資源循環促進法(プラ新法)は、家庭系か産業系か(すなわち、一般廃棄物か産業廃棄物か)を問わず、プラスチックという素材に着目し、資源循環に踏み込んだ法律として注目されています。

 このプラ新法に反応したのが司法試験です。司法試験には、基本7科目以外に選択科目8科目があり、環境法はそのひとつです。従来、環境法が対象とするのは10科目だったのですが、何と2023年度にプラ新法が追加されて、11科目になりました。

 一般に、法科大学院における環境法授業では、時間の割には教える内容が多いため、どの教師も苦労をしています。そこに制定間もないプラ新法が「純増」されたのです。教師はびっくりしました。私もその一人でした。しかし、四の五の言っている場合ではありません。幸い上智大学では環境法の授業数が多いため、何とか吸収できたのですが、他の法科大学院では苦労したでしょう。

 さて、司法試験です。追加してすぐに出題というのは、さすがに躊躇されます。次年度もそうでした。いつ出すのかが注目されたのですが、これまた何と2025年度には削除されて10法に戻ってしまいました。

 受験生の立場からすれば、勉強する科目数は少ない方がいいのは当たり前です。しかし、そんなことは、司法試験の出題者であってもわかるはず。それにもかかわらず追加したのは、プラ新法の重要性に鑑みた判断だったのでしょう。

 そうであれば、もう少し我慢して一度くらい出題してからであってもいいのではないかと思います。それができなかった理由は、定かではありません。

 かくして、一度も出題されずに引退したプラ新法。「司法試験に翻弄された」というほどのものではありませんが、環境法業界においては、ちょっとした出来事でした。

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