コモンのギモン(5)「心身の故障によりその業務を適切にできない者」

「心身の故障によりその業務を適切にできない者」

非常勤顧問 北村喜宣

 産業廃棄物処理業許可申請を拒否(不許可処分)できる絶対的事由のひとつが、「心身の故障によりその業務を適切にできない者」であることです。この事由は、廃棄物処理法14条5項2号イが引用する7条5項4号イに規定されています。その具体的内容を定める同法施行規則2条の2の2は、「精神の機能の障害により、廃棄物の処理の業務を適切に行うに当たつて必要な認知、判断及び意思疎通を適切に行うことができない者」と規定します。

 かつては、「成年被後見人又は被保佐人」とされていましたが、一律除外は障害者権利条約などに鑑みて不適切と判断されました。そこで、廃棄物処理法は、同様の規定を設けていた187の法律とともに、2019年に改正されたのです。

 成年被後見人であるかどうかは、法務局で成年後見登記を調べればわかります。しかし、現在は、それだけでは申請を拒否できませんから、個別事案ごとの実質判断が行政には求められます。

 たとえ、成年被後見人であるという登記事項証明が添付されていても、「産業廃棄物の収集運搬業を営むのには支障はない」という趣旨の医師の診断書が添付されていれば、行政は許可せざるをえないでしょう。かりにその診断書がずさんであるとしても、行政は、セカンドオピニオンの提出を義務づけることはできません。

 かくして、営業は開始されます。ところが、たとえば認知症の有病者であることから業務に支障を生じ、委託基準違反が発生したとします。そうなれば、状況次第では、改善命令や営業停止という処分につながるでしょう。

 もっとも、これらは、すべて事後対応です。許可制度というのは、不適切な者を事前に排除するためにありますが、それが機能しないのです。かりにそうした許可業者との契約によって被害を受けた排出事業者が、許可をした行政に対して、国家賠償請求をすればどうなるでしょうか。行政の過失は認定されるでしょうか。裁判所は、難しい判断を迫られます。

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