コモンのギモン(4)「CNの潜在的破壊力」

「CNの潜在的破壊力」
非常勤顧問 北村喜宣
環境保全をするためには、法律を制定して、義務づけをして、違反があれば罰則を科して……。環境法テキストで解説される古典的な規制パターンです。この点で、最近注目されるのが、カーボンニュートラル(CN)です。2015年に合意されたパリ協定を受けて、多くの先進国が、「世界的な平均気温上昇を産業革命以前 に比べて2℃より十分低く保つとともに、1.5℃に抑える努力を追求する」という目標に向けて走り出しました。
日本においては、地球温暖化対策法の2021年改正によって、「2050年までにCO2排出実質ゼロ」が法定目標となりました。2024年に制定された再資源化等事業高度化法は、CNを明確に目的規定に掲げています。
こうした動きが産業廃棄物処理に与える影響は、きわめて大きいと考えられます。国際競争にさらされている事業者に対して、CO2削減に向けた圧力が、市場を通じて加えられているからです。事業者がお金を払って購入するサービスに関係するプロセスは、スコープ3と呼ばれます。廃棄物処理はこれに含まれます。そこにおけるCO2排出の削減の実現も、排出事業者に期待されているのです。
もちろん、排出事業者が直接にできるわけはありません。収集運搬や中間処理の工程においてなされるCO2削減が、間接的に排出者の削減分としてカウントされるのです。こうしたサービスは複数の排出事業者が購入しますから、実際には、マルティプルカウントになるでしょう。現在では、この点については、あまりうるさくいわれていません。
今後、産業廃棄物処理業者は、規模を問わず、排出事業者からCO2削減を確実に求められるようになります。そうすることが彼らの法的義務ではないのですが、スコープ3における削減に無関心であれば、ESG金融市場において低く評価されて資金調達ができないからです。CNの潜在的破壊力は、計り知れません。早期に取り組まなければ、取り残されてしまいます。