コモンのギモン(6)「『暴力団員でなくなった日』って一体……」

「暴力団員でなくなった日」って一体……
非常勤顧問 北村喜宣

許可制を規定する法律の多くは、そのなかで、欠格事由を定めています。絶対的申請拒否事由です。廃棄物処理法も、例外ではありません。
産業廃棄物処理業の場合、14条5項2号イ~ハに規定があります。私がかねてより疑問に思って調べているのが、「ロ ……暴力団員でなくなつた日から5年を経過しない者」です。暴力団条項と称されます。廃棄物処理法を含め、現在、57法律に規定されています。行政はどのようにして「なくなった日」を知ることができるのでしょうか。

現住所への転出・転入は、住民票で確認できます。住民基本台帳法が制度の根拠法です。一方、暴力団員基本台帳法はありません。廃棄物処理法についていえば、23条の3および23条の4が、警察への照会と回答を規定しています。このように、該当性判断は、警察がするのです。
 

住民票の場合には、私たちが役所に出向いて手続をします。しかし、まさかカタギの人が警察に出向いて「私は今日から暴力団員になります」と申請するはずがありません。警察は、暴力団事務所にガサ入れした際に名簿を閲覧して、構成員に関する独自の記録を作成します。行政の照会に対する警察の回答の根拠は、この記録です。
 

それでは、ある構成員が「退団」しようとして警察に出向けば、警察はその記録を修正してくれるのでしょうか。答えはノーです。警察が消さないかぎり、永久に暴力団員であり続けるのです。消除する基準は曖昧ですし、メンテナンスも頻繁ではありません。結局、「暴力団員でなくなった日」とは、実際には、「そのように警察が判断した日」です。
 

このようなアバウトな暴力団条項が初めて規定されたのは、特定非営利活動推進法(NPO法)の2002年改正によるようです。内閣法制局がこれを認めたのかと疑問でしたが、同法が議員提案であったため、改正も議員提案でなされています。そこで、衆議院法制局に情報公開請求をして関係資料を入手しようとしたのですが、審議資料は開示対象外になっていました。合憲性判断をどのようにしたのか、真相は謎のままです。

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