コモンのギモン(7)「廃棄物処理法の廃棄物でない廃棄物」

廃棄物処理法の廃棄物でない廃棄物
非常勤顧問 北村喜宣
廃棄物ならばすべてが一般廃棄物か産業廃棄物のいずれかになり、廃棄物処理法の適用を受ける。そのようにお考えの方もおいでかもしれません。しかし、法制度上は、そうなっていないのです。すなわち、「廃棄物処理法の廃棄物でない廃棄物」は実在しています。それは、「土砂」です。
「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について」(昭和46年10月16日・環整第43号)は、「なお、次のものは廃棄物処理法の対象となる廃棄物でないこと。」とし、「土砂及びもつぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの」を列挙しました。
土地造成という積極的行為のためのものですから、まさか廃棄物が含まれていてよいはずがありません。地下室工事のための土地の掘削によって副産物として排出されれば、それ自体は不要物であり、それゆえに廃棄物処理法のもとでの廃棄物になるはずです。しかし、当時は、宅地造成や海面埋立ても盛んでしたから、少し時間をおけば有用物として再利用できたのでしょう。また、現実的にも、これを安定型処分場に直行させたのでは、いくら容量があっても足りないのは明白でした。
ところで、人口減少時代となり、宅地造成も海面埋立ては、ぐっと少なくなりました。副産物土砂に対する需要は減少しています。このため、実際には、不要物としての土砂が発生しています。2021年7月3日の熱海市伊豆山地区土石流が想い出されます。
環境省の解説書は、上記の43号通達に関して、「一般に土地造成の材料として使用されている有用物であって、廃棄物として客観的に観念することは困難」と説明しています。したがって、そうしたわけでもなく不要物状態ならば、原則に戻って、廃棄物処理法上も廃棄物となるはずです。現状では、事業系一般廃棄物なのですが、施行令2条に新たなカテゴリーを設けて産業廃棄物にするのが適切です。あるいは、別の法律を制定して対応すべきです。ところが、そういう動きもなく、現場行政においては、何となく「土砂は廃棄物ではない」という整理が継続しています。
放射性汚染物が廃棄物処理法の対象外という点は、同法2条1項に明確です。土砂についてもそうしたいなら、少なくとも法律本則で明記するべきです。現在の状況は、「漠然性ゆえに無効」という気がしないではありません。