INDUST3月号に「令和5年許可処分取消請求訴訟(認容)について」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2024年3月号に「令和5年許可処分取消請求訴訟(認容)について」が掲載されました。
https://www.zensanpairen.or.jp/books/indust/21569/
令和5年7月4日に広島地裁で最終処分場の設置許可申請に対する許可処分が取り消されるという判決がありました。行政が行った設置許可処分が取り消されるのは珍しいことです。この事例について2回に分けてご紹介していきます。
事案の概要
安定型最終処分場Zの設置許可申請に対して広島県が許可処分を行いました。これに反対する住民が設置許可処分取消請求訴訟を提起しました。
争点①原告適格の有無
ア 原告適格の意味と意義
法は訴訟を行うにあたっては、その権利について最も利害関係を有する者について、訴訟上権利を請求する資格である原告適格を認めています。不法行為に基づく損害賠償請求訴訟などについては、当該問題となっている権利義務の当事者が最も利害関係を有する者として原告適格が認められています。
イ 行政訴訟における原告適格
法は「取消訴訟は当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。」(行政事件訴訟第9条第1項)と規定しています。つまり最終処分場の設置許可処分について訴訟を提起するにあたっては、「当該処分又は裁決の取消しを求めるにつき法律上の利益を有する者」であることが必要になります。
ウ 「法律上の利益を有する」の意味
判例は、「法律上の利益を有する」か否かの基準として、「当該処分を定めた行政法規が、不特定多数者の具体的利益を専ら一般的公益の中に吸収解消させる にとどめず、それが帰属する個々人の個別的利益としてもこれを保護すべきものとする趣旨を含むと解される場合には、このような利益もここにいう法律上保護された利益に当たり、当該処分によりこれを侵害され又は必然的に侵害されるおそれのある者は、当該処分の取消訴訟における原告適格を有するものというべき」であるとしています。
廃棄物処理法上の許可取消請求訴訟についてはどうでしょうか。仮に周辺住民について原告適格が認められるとして、その範囲についてはどうでしょうか。
争点②最終処分場設置許可要件の有無
廃棄物処理施設の設置許可にあたっては、法第15条の2第1項により、以下の要件を満たしている必要があります。
① 産業廃棄物処理施設の設置に関する計画が環境省令で定める技術上の基準に適合していること。
② 産業廃棄物処理施設の設置・維持管理に関する計画が周辺地域の生活環境の保全及び環境省令で定める周辺の施設について適正な配慮がなされたものであること。
③ 申請者の能力が産業廃棄物処理施設の設置・維持管理に関する計画に従つて的確に、かつ、継続して行うに足りるものとして環境省令で定める基準に適合するものであること。
④ 申請者が欠格要件に該当しないこと。
本件最終処分場について設置許可の要件が認められるでしょうか。
裁判所はこれら争点についてどのような判断をしたのでしょうか。本稿では裁判所の一般論としての原告適格の判断について紹介していきます。
ぜひご覧ください。