INDUST7月号に「第二次キンキクリーンセンター事件判決と排出事業者の措置義務(福井地方裁判所令和3年3月29日)」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。

2022年7月号に「第二次キンキクリーンセンター事件判決と排出事業者の措置義務(福井地方裁判所令和3年3月29日)」が掲載されました。
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福井県敦賀市にある最終処分場において、許可容量を大きく超える廃棄物が搬入されました。その結果、搬入された廃棄物全体が不法投棄されたものとされました。さらに、周辺の河川に汚染水が流入するなどの生活環境保全上の支障が生じたことから、福井県と敦賀市が処理費用等を負担することとなりました。処分場に搬入された一般廃棄物を排出した自治体に対して敦賀市が費用を請求したところ、自治体によっては請求に応じませんでした。そこで、請求に応じなかった自治体に対して敦賀市が請求訴訟を提起しました。

津山圏域東部衛生施設組合(以下、津山市)を被告として請求訴訟を提起した訴訟を第一次訴訟と呼ぶこととします。敦賀市が津山市に対して請求した費用とは、「支障除去等の包括的措置」に要した事務管理費用であるとされました。津山市に対して本件対策工事費用の請求が認められるためには、敦賀市が支払った本件対策工事が津山市の行うべき「事務」であると認められる必要があります。

裁判所は「事務であるかどうか」という争点についてどのように判断したのでしょうか。

第一次事件の判決の要旨は以下のとおりです。
❶ 一般廃棄物については市町村をその処理責任の主体と定めて一般廃棄物の処理についての統括的な責任を負わせている。
❷ 市町村は一般廃棄物の処理についてこのような支障除去等のために必要な一切の措置を講じるべき法的義務(「支障除去等の包括的措置義務」)を負う。
❸ 市町村が一般廃棄物の処理を他人に委託した場合であっても支障除去等の包括的措置義務を免れない。

判決は、「支障除去等の包括的措置義務」の負担者を自治体に限定していません。判例の論旨を推していくと、民間の排出事業者についても自治体と同様の「支障除去等の包括的措置義務」が課される可能性があります。しかし、民間の排出事業者については、「住民の生活環境を維持する」責任はなく、廃棄物処理法に定められた排出事業者としての責任を果たしている限り、支障除去の包括的措置義務を負うことはないと解すべきではないでしょうか。この点についてどのように判断するか、第一次事件の高裁の判決が注目されましたが、一審の地裁判決の後、和解されたため判断が行われませんでした。

そして、第二次キンキクリーンセンター事件において、再度、自治体が事務管理責任を負うか、また、その内容はどのようなものであるかが問われました。第二次事件の判決の要旨は以下のとおりです。
❶ 市町村は一般廃棄物の処理についての統括的な責任を負う。
❷ 市町村が廃棄物の処理を他人に委託した場合であっても、一般廃棄物の処理における市町村の統括的な責任は他者に委託することによって免れることはない。
❸ 市町村の処理責任は排出自治体内に限られない。
❹ 排出自治体は一般廃棄物の不適切な処分によって生活環境の保全上支障又はそのおそれが生じている場合には支障除去又は防止のために必要な措置を講ずる義務を負う。

第一次訴訟判決においては、民間の事業者が廃掃法上の義務を尽くし、排出事業者としての措置義務を負わない場合であっても、支障除去等の包括的措置義務を負うかどうかについては疑問が残るものでした。これに対して、第二次訴訟判決によれば、市町村としての責任から一般廃棄物についての統括的責任が認められており、民間事業者については、廃掃法上の義務を果たしている限り、措置義務を超えた支障除去等の包括的措置義務を負う根拠はないと解されています。

本文では、上記判決の判断過程について解説していきます。

是非ご覧ください。


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