INDUST5月号に「これからのプラスチック資源循環のあり方 その2」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2021年5月号に「これからのプラスチック資源循環のあり方 その2」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/2110748/
令和3年1月28日、中央環境審議会循環型社会部会プラスチック資源循環小委員会、産業構造審議会産業技術環境分科会廃棄物・リサイクル小委員会、プラスチック資源循環戦略ワーキンググループ合同会議において「今後のプラスチック資源循環施策のあり方について」が示されました。本稿ではこちらをご紹介したいと思います。
1 基本的方向性
資源循環の高度化に向けた環境整備の具体化を通じて、 循環経済への移行に向けた再設計(Redesign)を進め、①海洋プラスチックごみ問題、気候変動問題等の同時解決に貢献し(環境面)、 ②プラスチック資源循環への貢献をグローバル市場における競争力の確保につながる成長エンジンと捉え、あらゆる企業にとっての成長分野として投資の対象となる環境整備を進め(経済面)、 ③少子高齢化への対応や消費者のライフスタイル変革を促す(社会面)ことによって、 「環境、経済、社会の三方よし」を目指していくとしています。
2 主な施策の方向性
⑴ リデュースの徹底
① リデュースのための事業者への要請
製品設計の段階から軽量化や代替素材への転換等の合理的な対策を進めるべく、ワンウェイ(一回のみしか使用されないこと)のプラスチック製容器包装・製品の製造事業者やブランドオーナーが取り組むべき環境配慮設計の基本的な事項を整理した指針を示し、これを踏まえた事業者による環境配慮設計やそのための業界単位での設計の標準化などを促す。
② 消費者への行動変容
ワンウェイのプラスチック製容器包装・製品について、過剰な使用の削減や代替素材への転換など事業者が取り組むべき措置を示すとともに、これを踏まえた取組を行うことを求め、消費者の行動変容を促す。
⑵ 効果的・効率的で持続可能なリサイクル
① リユース・リサイクル可能な製品設計
環境配慮設計の基本的な事項を整理した指針を示し、プラスチック製品の業者による環境配慮設計やそのための業界単位での設計の標準化などを促す。
また、易分別性・易リサイクル性等の環境配慮設計や再生素材・バイオプラスチック利用などのイノベーションが促進される公正・公平なリサイクルの仕組みを検討する。
② プラスチック資源の回収・リサイクルの拡大と高度化
関係者にとって分かりやすく、システム全体として効果的・合理的で、持続可能な分別回収・リサイクル等を適正に推進するよう、そのあり方を検討する。
また、各主体の連携協働と全体最適化を通じて、費用最小化と資源有効利用率の最大化を社会全体で実現する、持続的な回収・リサイクルシステム構築を進め、リサイクルの質と量を向上させる。
ⅰ 家庭から排出されるプラスチック資源の回収・リサイクル
ア 消費者に分かりやすい分別ルールとすることを通じて資源回収量の拡大を図るともに、効果的・効率的なリサイクルに向けて、プラスチック製容器包装・製品をまとめてリサイクルすることや、市町村とリサイクル事業者で重複している選別等の中間処理を一体的に実施することが可能となる環境を整備する。
イ また、市町村とリサイクル事業者の双方で行ってきた異物除去等の選別工程について、プロセス全体でコスト低減が見込まれ、かつ、リサイクルに支障がない場合には、市町村及びリサイクル事業者が連携して選別工程の一体的運用が行えるよう、合理化のための措置を講じる。
ⅱ 事業者から排出されるプラスチック資源の回収・リサイクル
ア 排出事業者に対し、事業者が取り組むべき措置を示すとともに、これを踏まえた取組を行うことを求める。
イ また、排出事業者がリサイクルを行う事業者と連携し、自らが分別・排出するプラスチック資源を円滑に高度リサイクルすることを可能とする措置を講じる。
ウ さらに、事業者(例えば、小規模店舗等)から排出されるプラスチック資源を市町村が回収する場合には、家庭から排出されたものとまとめてリサイクルできる環境を整備する。
ⅲ 効率的な回収・リサイクルの基盤整備
バージン材と遜色のない高い品質の再生素材の供給等を目指し高度なマテリアルリサイクルやケミカルリサイクルを含め、プラスチック資源の性状に応じた最適な手法の選択が可能となるよう、必要なリサイクル・熱回収の技術開発と社会実装に向けたインフラの整備を支援する。
① 再生素材の利用促進
プラスチック資源の回収・リサイクルの拡大と高度化を進めるためには、出口側の再生素材の需要の拡大とそれに見合った供給体制の確保が重要である。このため、環境価値の「見える化」を通じて、再生素材の供給・利用を拡大するべく、技術開発・インフラ整備、政府率先調達等による需要喚起、リサイクル事業者と利用事業者のマッチング、化学物質の適正かつ効率的な管理、業界における認証整備等を支援し、リサイクル関連産業の振興、育成等を推進する。
② バイオプラスチックへの代替促進
各製品・素材の特性、利用実態とポテンシャルを踏まえ、バイオプラスチック導入に向けた基本的な方針や生産設備・技術開発支援、政府率先調達等による需要喚起等の必要な施策を整理したバイオプラスチック導入ロードマップ を策定し、これに基づき施策を展開する。
⑷ 分野横断的な促進策
① 消費者の理解・協力の促進
消費者に分かりやすい形で、リサイクルの見える化(分別された資源がどのようにリサイクルされているかを明らかにする等)を行う、消費者が環境配慮設計の進んだ製品を積極的に手に取る機会を創出すること等を通じてエシカル消費 をはじめとする消費者のライフスタイル変革を促す。
② 企業・地方公共団体による先進的な取組の展開
クリーン・オーシャン・マテリアル・アライアンス(CLOMA) やプラスチック・スマート 等のプラットフォームを活用することにより、先進的な企業や地方公共団体、NGO等の取組事例の創出・横展開を図る。
③ ESG金融 による取組の後押し
投資家及び企業双方に向けたプラスチック資源循環分野のESGガイダンスを策定し、❶プラスチック資源循環に率先して取り組む企業が、業価値向上と国際競争力につながる共通基盤を整備し、❷投資家等と企業との建設的な対話を支援するとともに、❸ガイダンスやこれに基づく取組を国内外に情報発信し、グローバルにも投融資を呼び込んでいく。
④ 政府の率先的・基盤的な取組
政府が率先的に取り組む一環として、政府が率先して環境負荷の低減に資する製品を調達するとともに、地方公共団体への調達を促すことにより、環境負荷低減に資する製品の普及を後押しする。
また、動脈から静脈に渡る幅広いリサイクル・資源循環関連産業の高度化に向け、資源循環関連技術の開発、優れた技術の社会実装に向けたインフラの整備等を支援する。
本稿では筆者視点の意見も交えて解説していきます。
ぜひご覧ください。