INDUST12月号に「災害廃棄物を廃棄物処理施設で処理可能に」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2020年12月号に「災害廃棄物を廃棄物処理施設で処理可能に」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/2053839/
災害廃棄物は事業に伴って生じたものではありませんので、一般廃棄物として処理されるのが原則です。しかしながら、同時かつ多量に発生する災害廃棄物の処理が一般廃棄物処理施設では間に合わないことを経験し、平成27年に災害廃棄物処理関連の改正が行われたところですが、令和2年7月16日、再度、災害廃棄物処理について改正が行われました。これらの改正はどのようなものか見ていきたいと思います。
1 平成27年改正
⑴ 改正の趣旨(目的)
平成27年改正は、平成23年(2011年)3月11日に発生した東日本大震災の未曾有の災害廃棄物の発生を経験した後、初めて行われた改正でした。東日本大震災の廃棄物の特徴は、広域的かつ津波による被害を受けた廃棄物(津波廃棄物)が多く発生したことが特徴的でした。津波廃棄物は、塩分と水分を大量に含んでいるため、腐敗しやすく、腐敗すると悪臭を放つという特徴がありました。
これらの廃棄物が一度に大量に発生するため、これらの廃棄物をいかに適正かつ円滑・迅速に処理できるかが、生活環境の保全・公衆衛生の悪化の防止上のカギになります。
一度に大量に発生した廃棄物を適正かつ円滑・迅速に処理するにあたっては、経験不足な自治体が多く混乱が見られました。そこで、災害対策基本法の一部見直しを行うとともに、廃棄物処理法の一部改正が行われたというのが平成27年改正です。
⑵ 平成27年改正の概要
一般廃棄物を産業廃棄物処理施設で処理するにあたっては、事前に都道府県知事に対して届け出ることが必要とされていましたが、平成27年改正により、非常災害時において一般廃棄物を産業廃棄物処理施設で処理するについては、事後の届出で足りるとされました。
その他、災害廃棄物について、平時より大規模災害の対応について、「切れ目のない災害対策」を実施・強化すべく、廃棄物処理法の総則部分に規定が追加されました。改正を受けて、各自治体と各廃棄物処理(資源循環)協会とが協定を締結する等、平時より緊急災害発生時に向けて準備を行う体制が整えられるようになったといえます。また、役割分担という意味では、廃棄物処理(資源循環)業者と建設業者等が役割分担し、その後発生した災害時の廃棄物の仮置き場等の管理を分担して行う、といったことがみられました。
2 令和2年改正
⑴ 改正の趣旨
令和2年改正法においては、地球温暖化等の影響を受け、近年、非常災害が毎年のように全国各地で頻発し、災害廃棄物が大量に発生していること、被災地の復興には災害廃棄物の迅速な処理が不可欠であること、既存の一般廃棄物処理施設では処理できない量の災害廃棄物が発生した場合において、災害廃棄物の中には平時であれば産業廃棄物として排出されるはずであった廃棄物も多くあり、その処理に既存の産業廃棄物処理施設の更なる活用が考えられたため、特例の対象となる災害廃棄物について範囲がさらに拡大されました。
⑵ 廃棄物と同様の性状を有する災害廃棄物の処理を可能とする特例の創設について
それまでは一般廃棄物を産業廃棄物処理施設において処理するためには同一の種類の廃棄物を処理する場合であることが必要でした。今回の改正では、廃棄物の種類にかかわらず「同様の性状」を有する廃棄物については、廃棄物処理施設の種類にかかわらず処理することができるという規定が新設されました。災害廃棄物を産業廃棄物の種類を問わず業廃棄物処理施設において処理するということは、一般廃棄物と産業廃棄物という法的な区別を、物の性状が同様なものである限り、法の枠組みを取り払って同様の処理が可能とするものです。
3 留意事項
一般廃棄物を産業廃棄物処理施設において処理する場合には以下の3つの点に留意が必要です。
⑴ 一般廃棄物処理施設として設置された施設に係る維持管理基準等について
改正省令の適用を受けて一般廃棄物処理施設として設置された廃棄物処理施設の設置者に課せられる維持管理情報の公表・記録の閲覧の義務の履行に当たっては、当該施設において処理する一般廃棄物を産業廃棄物とみなし、産業廃棄物とみなされた一般廃棄物に係る維持管理情報についてもあわせて公表・閲覧する必要があります(規則第12条の7の18)。
⑵ 一般廃棄物処理施設として設置された施設に係る処理基準について
改正省令の適用を受けて一般廃棄物処理施設として設置された廃棄物処理施設において処理する一般廃棄物については、一般廃棄物の処理基準が適用されます(令第3条第2号及び第3号)。
⑶ 運用の際の留意事項について
また、令和2年7月16日付「廃棄物の処理及び清掃に関する法律施行規則の一部を改正する省令の施行について(通知)」(環循適発第2007161号)において、災害廃棄物については、排出元が不明である場合があること、その性状が多様であることを踏まえ、都道府県知事は、届出をした者に対し、処理しようとする災害廃棄物の性状確認について十分留意する必要があるとしています。
本稿ではより詳しく解説していきます。
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