コモンのギモン(8)「審査基準と違法行政」

審査基準と違法行政

非常勤顧問 北村喜宣

行政の運用が違法かどうかは、最終的には、訴訟が提起されて判決でそのように断じられなければわかりません。もっとも、確立した判例がある場合には、それをいわばモノサシにして行政実務をみると、提訴されれば違法と判断される運用が数多くあります。モノサシとなるのは、行政手続法です。この法律は、単独では機能せず、個別法、たとえば、廃棄物処理法と一緒になって初めて効果を発揮します。

廃棄物処理法が規定する許可基準のなかには、「破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者」(7条5項4号ロ)のように、内容が明確なものがあります。しかし、そうでないものもあります。たとえば、「その業務に関し不正又は不誠実な行為をするおそれがあると認めるに足りる相当の理由がある者」(7条5項4号チ)です。このように曖昧な規定であっても、申請を審査する行政としては、気分で判断するわけにはいきません。何らかの手持ち基準を内規として用意しておき、それに照らして許可・
不許可を判断します。

行政手続法は、行政が実際に使っている基準のことを「審査基準」ととらえて、それを公にすることを命じています。審査基準は、法令そのものではありません。ところが、廃棄物処理法の許可担当者に「審査基準をみせてください」というと、出てくるのは、廃棄物処理法7条や14条の条文そのものなのが大半です。それ以外はないのですかと問うても、「ありません」といいます。この状態は、明らかに行政手続法に違反しています。こうした状態で申請を拒否した場合において取消訴訟が提起されれば、行政は確実に敗訴します。

法令を審査基準と信じて疑わない行政職員に理由を聞くと、厚生省(!)の1994年通達が提示されることがあります。そこには、法律で言い尽くされているので審査基準はつくる必要がないと記されていました。この認識がそもそも違法ですが、「国が言っているから」ということで、30年以上もそのままなのです。

上記の要件の判断にあたって、廃棄物処理法の現在の所管省である環境省は、『行政処分の指針』を公表しています。ひとつの対応は、これの関係部分を審査基準と位置づけることです。

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