コモンのギモン(15)「雪は廃棄物か?」

「雪は廃棄物か?」

非常勤顧問 北村喜宣

 敷地に降った雪が集められて「雪捨て場」に搬入される。雪国においては通常みられる光景であり、特段の問題はないように思われます。

 しかし、廃棄物処理法の観点からは、「雪捨て場」という表現が気にかかります。捨てているのは、不要物だからですね。それなら、同法のもとでの廃棄物になるのでしょうか。あるいは、廃棄物ではあるけれども、同法の規制はかからないのでしょうか。  

 廃棄物処理法のもとでは屋外焼却は禁止されていますが(16条の2)、例外が限定列挙されています(施行令14条各号)。たとえば、「たき火その他日常生活を営む上で通常行われる廃棄物の焼却であつて軽微なもの」があります。この規定から明らかなように、焼却されるのは廃棄物なのですが、規制対象にはしないのです。

 それでは、雪捨て場に捨てられる雪はどうでしょうか。「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない。」(16条)という規定に違反するのでしょうか。屋外焼却のように、法令による適用除外が規定されていないため、解釈になります。①廃棄物ではないから問題はない、②廃棄物だが「みだり性」がないから問題はない。どちらでしょうか。

 廃棄物該当性は、総合判断説によります。放置すれば流出しますから、性状基準にひっかかります。雪像の資材というような需要を前提としない排出ですから、排出状況基準にひっかかります。市場が形成されていませんので、通常取扱形態基準も充たします。有償譲渡はされていませんし、場合によっては、委託費用を払っているかもしれませんから、逆有償です。占有者にとっては不要なものです。

 このように考えると、雪は廃棄物というほかありません。家庭系一般廃棄物または事業系一般廃棄物です。自己処理しないかぎりは、市町村による委託処理か許可業者への委託処理をするほかありません。それでは、市町村は、そのような認識でいるのでしょうか。そうではありません。廃棄物であるとはまったく認識されていないようです。

 こうした行為は、廃棄物処理法の制定(1970年)のずっと前から行われていたものです。また、捨てられる雪そのものが生活環境保全上の支障を発生させるわけではありません。このため、たしかに明文規定はないのですが、①でも②でもなく、それを問題視しないのは、一種の「地域的慣習法」であり、同法の対象外と解されているように思います。

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