コモンのギモン(17)「月例会」

「月例会」
非常勤顧問 北村喜宣
芝田総合法律事務所では、毎月一度、月例会を開催しています。事務所の業務に関する法律についての勉強会です。
8月の月例会には、ゲストスピーカーとして、横田勇さんをお招きしました。横田さんは、元厚生省職員です。廃棄物処理法の制定時に厚生省でお仕事をされており、同法の誕生に立ち会った方です。まさに「生き証人」であり、とても貴重なお話をうかがうことができました。そのひとつをご紹介しましょう。
産業廃棄物の種類についてです。現在は、廃棄物処理法施行令2条に20項目が列挙されています。制定時には、施行令1条に18項目が列挙されていました。そこには、たとえば「金属くず」のように、特段の限定が付されていないものもあれば、「紙くず」や「繊維くず」のように、業種限定や工程限定がカッコ書きによって付されているものもあります。こうした限定が付される結果、それに該当しない廃棄物は、産業廃棄物ではなく(事業系)一般廃棄物になることは、ご承知の通りです。
廃棄物処理法が衆参社会労働委員会で可決される際の附帯決議では、「産業廃棄物の範囲を定める政令の制定にあたっては、その範囲を狭く限定することによって一般廃棄物の範囲を不当に拡大することのないよう留意すること。」とされていました。排出事業者処理責任原則からすれば当然の内容ですが、それを回避したいという動きが当初からあったことが推測されます。
政令決定過程においては、相当の「交渉」があったようです。結果的に、多くの項目について、限定が付されました。市町村の焼却炉の処理能力に余裕があるのであればそこで燃やせばよい、量的によほど大量でなければ産業廃棄物とするには問題があるという整理がされたためでした。大量に発生する場合には、性状が均一なので何らかのリサイクル利用ができ、産業廃棄物と分類したとしても,現実には処分はされないという事情もありました。
何を産業廃棄物にするのかは政令による決定ですので、社会状況に応じて変わってよさそうです。しかし、この分類を踏まえていろいろな社会制度や社会慣行ができあがっていますから、今から変えるのは難しいようです。