INDUST2020年11月号に「第三者が廃棄物処理委託費用の支払いを担当する場合の法律関係について」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。

2020年11月号に「第三者が廃棄物処理委託費用の支払いを担当する場合の法律関係について」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/2043166/

廃棄物処理費用について、排出事業者からではなく仲介業者等から処理業者に対して支払われることが多くありますが、排出事業者が処理費用を仲介業者等に支払ったものの処理業者に対して処理費用が支払われないうちに紛争が生じる場合があります。本稿ではこのような紛争を防止するための策についてご紹介します。

令和元年10月25日東京地方裁判所において、産業廃棄物処理費用の支払いにおいて複数の仲介業者(H1、H2)が絡んだ事案において、原告となった処理業者がH2に対して処理費用の支払いを求めたところ、これが認められた事案がありました。

事案の概要
排出事業者N社と処理業者A社との間には産業廃棄物処理委託契約が締結されていましたが、処理費用の支払いについてはN社、A社及びH1社との間で覚書が締結され、N社からH1社をとおしてA社に支払われることとなっていました。
ところが実際には、支払いはN社よりH1社に対して支払われた後、H1社からH2社に対して支払われ、H2社から自らの手数料を控除した額をA社に対して支払われるものとされていました。しかし、現実には、H2社からA社に対して支払いは行われませんでした。そこで、A社からH2社に対して支払請求が行われました。H2社は、事業の悪化、資金の代表者の私的流用、N社・A社・H1社間で交わされた支払に関する覚書についてH2社は関与していないことなどを理由にA社からの支払請求を拒みました。

これに対して判例は、H2社が覚書に表れていないことを理由に支払いを拒むことはできないとし、A社からH2社に対する支払請求を認め、H2社に対してA社に未払いの処理委託費用を支払うように命じました。加えて、H2社がA社に対して支払を怠った後も、H1社とH2社の役員を兼任する者がA社と交渉しH2社において本件委託費用の支払をする意向を示し、H2社がその支払債務を負担している旨の債務確認書を作成し、現にその一部の弁済をしたなどの事情が考慮されました。

廃棄物処理委託費用の支払いを第三者が行う場合の法律の規定
民法は、第三者は有効に他人の債務を弁済することができるとしており(民法474条第1項)、他にこれを禁じる規定は廃掃法上もありませんから、第三者である仲介業者等による支払は適法、ということになります。

平成29年3月21日通知
これに対して、平成29年3月21日付「廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)」(環廃対発第1703212号)をもって第三者による支払の適否について疑問を提示される場合があります。
しかし、本通知は、処理委託の根幹的内容(委託する廃棄物の種類・数量、委託者が受託者に支払う料金、委託契約の有効期間等)については、決定を第三者に委ねるべきではない、としているにすぎず、第三者が排出事業者が負っている処理委託費用の支払いを行うことを禁じたものではありません。

予想される紛争類型
第三者が支払いを代行する場合、第三者が覚書等でどのように位置づけられているか、また、排出事業者の責任がどのように定められているかによって、分類されます。

(1) 第三者による支払いについて覚書がある場合
支払の覚書等により第三者が支払うこととなっている場合ですが、覚書の定め方によって、以下のように分類されます。
①支払担当者の定めがあり、かつ、第三者が処理業者に対して支払いを行うことができなくなった場合について規定がある場合
(ア) 最終的に、排出事業者が責任を負うものとし、第三者が支払うことができなくなったときは、排出事業者は第三者に支払った後であっても支払義務を免れないとするもの
排出事業者が本来的に処理費用の支払義務を負っているものであり、第三者は排出事業者が本来的、最終的支払義務を負う処理費用を肩代わりしているものにすぎず、第三者が支払いを代行するのは、いわば排出事業者側の都合であるので、仮に第三者が支払いを全うできなくなったときは、排出事業者の責任が顕現化し、排出事業者が処理業者に対して支払を完了しなければならないということです。
排出事業者は、第三者にすでに支払った委託費用については、自己の責任で第三者から取り戻すことになります。

②排出事業者が第三者に支払いを行ったときは、排出事業者は責任を免れるとするもの
本件はこの類型にあたります。このような規定がある場合は、排出事業者が第三者に対して支払を行った後は、処理業者は排出事業者に対して請求することができなくなることを踏まえたうえで、支払いを行う第三者がどのような業者で、財産状態は健全であるのか否か注意しておかなければなりません。
(イ) 支払担当者の定めがあるのみで、第三者の処理業者に対する支払が不可能になった場合の定めがない場合
この場合、すでに第三者に対する支払いを終えた排出事業者としては、仮に処理業者に委託費用を支払い、第三者に対して支払った処理費用を取り戻そうとしても第三者の経済状態が悪化しているのが通常ですから取り戻すことは期待できません。排出事業者はすでに支払いを終えた以上、処理業者からの支払請求を拒むことが予想されます。

(ウ) 支払担当者の規定がない場合
第三者が支払うことになっているが誰が支払うか覚書等によって定められていない場合、第三者が何らかの理由で支払いを行わなかった場合には、処理業者は当該第三者が支払義務を負っていることから主張しなければなりません。

まとめ
以上のように、第三者による支払については、法律に反するものではないものの、第三者が支払いを完了できなかった際には紛争に発展する可能性が高いといえます。
処理業者としては、可能な限り、第三者が支払いを完了できなかった際には排出事業者が最終的な責任を負う旨の覚書を締結すべきであるといえます。もっとも、そのためには排出事業者の協力が必要なため、排出事業者が拒めばそのような規定を設けることはできません。その場合には、第三者が支払いを完了できなかった場合のリスクを想定し、準備をしておく必要があります。
できる限り排出事業者の最終責任を明確にしておくことが紛争予防のためには重要と考えます。また処理業者としては、第三者の財務状況や信用度なども事前に確認し、リスク管理を行うべきでしょう。

本稿ではより詳しく解説していきます。

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