INDUST2021年11月号に「千葉市再生資源物の屋外保管に関する条例について」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2021年11月号に「千葉市再生資源物の屋外保管に関する条例について」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/2181034/
2021年10月1日、朝日新聞において全国で初めて、千葉市において、再生資源物の屋外保管場についての設置を許可制とする条例案を可決したとの報道がありました。今回はこの条例案について検討したいと思います。
千葉市のHPによると本条例について以下のように紹介されています。
市内の市街化調整区域を中心として、多くの再生資源物※の屋外保管施設(金属スクラップヤード)が存在しており、操業に伴う騒音・振動や不適切な保管による火災の発生など、地域住民の生活の安全に支障をきたす状況が発生しています。一方、再生資源物は有価物として取引されているため、廃棄物の処理及び清掃に関する法律(廃棄物処理法)の規制対象となる「廃棄物」には該当しないため、その保管について直接規制する法令等がありません。
そこで、千葉市では市民生活の安全の確保及び生活環境の保全を図ることを目的として、再生資源物の屋外保管を行う者が守るべき義務等必要な事項を定めた本条例を制定し、令和3年11月1日から施行することになりました。これにより、施行日以降、再生資源物の屋外保管を行う事業者は、原則、設置する屋外保管事業場※ごとに許可を受けなければなりません。
なお、許可を取得せず屋外保管事業場を設置・使用した場合、無許可の設置となり、罰則(1年以下の懲役又は100万円以下の罰金)の対象となる可能性があります。
本条例は以下の点について、構造としてかなり廃掃法に近い印象を受けます。
ア 生活環境の保全を目的とすること
イ 再生資源物の屋外保管を対象とすること(廃掃法:有害使用済機器の保管)
ウ 再生資源物の屋外保管は許可制であり、欠格要件の規定も設けられていること
エ 許可の有効期間が5年とされ、更新に許可が必要なこと
オ 廃掃法の有害使用済機器の保管基準と類似していること
カ 市長の権限が類似していること
キ 違反者への罰則が類似していること
もっとも、以下の点について異なっているのが特徴的です。
ア 対象について、廃掃法は「廃棄物」を、本条例は「資源物」であること。
イ 有害使用済機器について、廃掃法は「家電リサイクル法対象品目を含む家電32品目」に限定されており、本条例は「業務用の機器や家電ではない金属を含む製品」や「破砕され金属、プラスチック等の混合物の状態となったもの」も含むこと。
ウ 保管について、廃掃法は届出制としており、本条例は許可制であること。
エ 許可要件について、住民説明会を行うこと。
このように、法律と条例が類似している場合、法律と条例との関係が問題となってきます。憲法上、条例は「法律の範囲内で」制定することができることとなっており、法律と条例の規制する対象が異なるとしても、法律がその対象については「規制を設けず放置する趣旨」であるとすれば、条例で規制を設けることは違法となります。
この点に関して、徳島市公安条例事件判決では、「条例が国の法令に違反するかどうかは、両者の対象事項と規定文言を対比するのみでなく、それぞれの趣旨、目的、内容及び効果を比較し、両者の間に矛盾抵触があるかどうかによってこれを決しなければならない」「ある事項について国の法令中にこれを規律する明文の規定がない場合でも、当該法令全体からみて、右既定の欠如が特に当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であると解されるときは、これについて規律を設ける条例の規定は国の法令に違反することとなりうる」と述べています。
判例の基準に従って本条例をみると、本条例は廃掃法の規定していない事項について規定しているものといえるため、廃掃法全体の規定からみて、廃掃法が再生資源物について規定を設けていないことが「当該事項についていかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨」であるかを検討することになります。また再生資源物について、廃掃法が設けていない規制を本条例で設けることが、廃掃法の「趣旨、目的、内容及び効果を阻害しないか、廃掃法と本条例との間に「矛盾抵触があるかどうか」を検討することになります。
本稿ではより詳しく解説していきます。
是非ご覧ください。