INDUST2017年7月号に「廃棄物処理法改正法案★大分析 ~『意見具申』にみる改正法の基本的視点 その2~」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。

2017年7月号に「廃棄物処理法改正法案★大分析 ~「意見具申」にみる改正法の基本的視点 その2~」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/1518756/

前回は平成29年2月14日付「廃棄物処理制度の見直しの方向性(意見具申)」の概要をご紹介するとともに、意見具申において指摘された廃棄物処理制度の見直しの主な論点の⑴「産業廃棄物処理状況の透明性の向上」及び⑵「マニフェストの活用」についてご紹介いたしました。本稿でも引き続き重要な論点についてご紹介したいと思います。

⑶廃棄物を排出する事業者の責任の徹底
現状と課題
「排出事業者の責任において主体的に行うべき適正な処理業者の選定や処理料金の確認・支払い等の根幹的業務が地方自治体の規制権限が及ばない第三者に委ねられることにより,排出事業者としての意識が希薄化することが懸念されて」いると指摘されており、「これらの問題等について地方自治体や事業者等に対して周知徹底する必要がある」としています。そして「廃棄物の適正な処理を確保するために,排出事業者の廃棄物処理業者に対する適正な対価を負担せずに委託することの防止や処理料金の支払い方法の適正化等の必要な対応を検討する必要がある」としています。

見直しの方向性
①適正処理の確保に支障を来すことがないよう、都道府県、市町村、排出事業者に対して、排出事業者の責任の徹底について改めて周知を図るべきである。
②排出事業者に対し、適正な対価を負担せずに委託した産業廃棄物が不適正処理された場合には、排出事業者が措置命令の対象となりえること。
③建設廃棄物の排出事業者の一元化規定(廃棄物処理法第21条の3第1項)は、産業廃棄物の処理料金の支払いも排出事業者の責任の下で行うことを想定していることを周知。
④適正な対価を負担せずに委託することの防止や処理料金の支払い方法の適正化の対策を講じるべきである。

分析と検討
ア 平成29年3月21日「廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)」(環産廃発第1703211号)
今回の改正法案には上記見直しの方向性は盛り込まれませんでした。ただし,上記見直しの方向性を受け,平成29年3月21日付環廃産発第1703211号「廃棄物処理に関する排出事業者責任の徹底について(通知)」が発せられました。この通知においては,「排出事業者は,委託する処理業者を自らの責任で決定すべきものであり、また処理業者との間の委託契約に際して、処理委託の内容は、排出事業者と処理業者との間で決定するものである。排出事業者は,排出事業者としての自らの責任を果たす観点から,これらの決定を第三者に委ねるべきではない。」と述べています。
理由としては「排出事業者責任の重要性に対する認識や排出事業者と処理業者との関係性が希薄になるのみならず、第三者に対する仲介料等が発生し、処理業者に適正な処理費用が支払われなくなるといった状況が生じ、委託基準違反や処理基準違反,ひいては不法投棄等の不適正処理につながるおそれがある」からとしています。

イ 環産廃発第1703211号が要請しているもの
この通知は第三者による仲介それ自体を禁じるものではありませんが、第三者の介在により「排出事業者の責任意識の希薄化→適正な処理料金の支払いが確保されない」といった状況が生じ,これにより不適正処理,ひいては不法投棄につながるおそれがあることを指摘するものです。
管理業者を利用している排出事業者,あるいは,処理業者に廃棄物処理にかかる事務手続を委託している排出事業者は、自らが処理委託をしている廃棄物処理業者が自らの廃棄物を処理する業者として適正な業者であるのか否か、処理業者に適切な処理費用を支払っているのかどうか,処理費用支払方法の適切性(第三者に支払の代行を委託することにより処理費用の適正が害されていないか等)について再度検討する必要があるといえます。

⑻優良な循環産業の更なる育成
現状と課題
優良産廃処理業者認定制度は、通常の許可基準よりも厳格な基準に適合する業者に優遇措置を付与するとともに産業廃棄物処理業全体の質の向上を図る制度です。平成28年9月末現在の認定件数は7670件であり,認定数と質の更なる向上が必要とされています。

見直しの方向性
①持出し先情報も含めた処理状況に関する情報のインターネットを通じた公表又は情報提供の追加を検討するとともに、財務要件の見直しを行うべきである。
②優良認定を受けた処理業者に対する優遇措置を検討するべきである。
③産業廃棄物処理業界が広く社会の信頼を得て、適正処理の推進に効力を有するために、廃棄物処理に関する優良な人材育成に向けた取組を推進する必要がある。
④③のために、業界団体等によるより実効的な研修や講習の実施等,職員の能力・知識の向上を推進するための取り組みを検討するべきである。

分析・検討
優良認定については、認定要件を満たす困難性に比してメリットが少ないこと、優遇措置の強化については、従来から廃棄物処理業界からの要望が多いところであり、これが見直しの方向性として検討されたことは意義のあることであるといえます。しかしながらこの点は見直しの方向性として提言されたのみで改正法案には盛り込まれませんでした。そのため今後、具体的な検討が行われるものと思われます。また産業廃棄物処理業界が広く社会の信頼を得ることの必要性が指摘されたことは産業廃棄物処理業界が循環資源社会を担う業界であることの意識が浸透したものであり、非常に意義のあることであるといえます。この産業廃棄物処理業界の社会的信頼の獲得という視点は、今回の改正法の見直しの検討にあたって随所に示されています。

本稿ではより詳しく解説していきます。

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