INDUST2017年11月号に「産廃行政の規制根拠」が掲載されました。

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2017年11月号に「産廃行政の規制根拠」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/1588848/
今回は、通知・施行令等の廃棄物行政を取り巻く各種規制についてみていきたいと思います。
廃棄物行政を取り巻く各種規制の種類
⑴ 法令(法律・施行令・省令)
廃棄物処理に関わる業者及び排出事業者に対する行政が行う監督権(規制)の根拠となるものとして、まず廃掃法があります。また廃掃法の委任する事項を定め、あるいは廃掃法を実施するための細則を定める政令、さらに政令の委任する事項、あるいは細則を定める省令(施行規則)があります。これらは法的拘束力を有するものとしてまとめて「法令」といわれます。
⑵ 条例
ア 条例とは
法律は国が全国統一的なものとして国会の議決によって制定するものですが、地方自治体(都道府県)が独自に定める各自治体ごとのルールとして「条例」があります。条例は住民自治の観点から地方議会の議決によって定めることが憲法及び法律上認められているものです(憲法第94条,地方自治法第14条第1項)。ただし条例は「法律の範囲内で」定める必要があります。
イ 「法律の範囲内」とは
「法律の範囲内」とは①「法律の規制より厳しい規制を設けてはいけない」、②「法律が規制していない事項を規制してはいけない」という二つの内容を有しています。条例が法律に違反するか否かが問題となった事件において、最高裁は、条例が法律に違反するものかどうかに関して以下のように判断をしています。
A ある事項について法律が規制を設けていない場合
ⅰ 当該法令全体からみて,法律が規制を設けていない趣旨が,いかなる規制をも施すことなく放置すべきものとする趣旨であるとき
→ 条例で規制を設けることは法律に違反する
ⅱ 当該法令全体からみて,法律が条令によって地方の実情に応じた規制を許容する趣旨であるときのとする趣旨であるとき
→ 条例で規制を設けることは可能
B ある事項について法律が規制を設けている場合(法律と条例が併存している場合)
ⅰ 原則として条例は「法律の範囲内」を超えるものとして違法
ⅱ 例外として条例によって法律とは異なる規制が許される場合
・条例が法律とは別の目的に基づく規律を意図するものであり、その適用によって法律の規定の意図する目的と効果をなんら阻害することがないとき
・法律と条例が同一の目的に出たものであっても、国の法令が必ずしもその規定によって全国的に一律に同一内容の規制を施す趣旨ではなく、それぞれの普通地方公共団体において、その地方の実情に応じて、別段の規制を施すことを容認する趣旨であると解されるとき
ウ 廃掃法と条例
廃掃法と条例との関係でいえば、各都道府県において環境保全条例,紛争防止条例等を制定し、その条例において廃棄物処理施設設置許可申請の際の手続等について定めるものがあります。
廃掃法は各地方の実情に応じた規制を一切禁じているものとは解することはできず、これらの環境保全条例等が直ちに廃掃法に違反するとはいえませんが(名古屋高判H15.4.16)、逆にいえば、条例等が廃掃法の趣旨・目的に反し,効果を阻害すると判断されるときには当該条例は廃掃法に違反し,無効と判断されることになります。この点、産業廃棄物に関する行政監督権の行使は、「法定受託事務」として都道府県の事務とされたものですが,「国が本来果たすべき役割に係るものであつて、国においてその適正な処理を特に確保する必要があるもの」(地方自治法2条9項1号)であって、統一的解釈運用が図られるよう運用されるべきであることが解釈上留意されるべきです。
⑶ 行政指導(指導要綱)
ア 行政指導(意義と方式)
行政から事業者に対して、「指導要綱」に基づく「行政指導」が行われることがあります。
「行政指導」は,「相手方の任意の協力によってのみ実現されるもの」(行政手続法32条第1項)であり、強制力はありません。したがって、行政指導に従わなかったからといって「不利益な取扱いをしてはならない」(同法第2項)はもちろん、行政処分等処分の対象となることはありません。しかしながら行政指導を受けた事業者としては、行政指導に従うか否かは「任意」であることを知らず、「従う義務があるもの」として従うことも多く、また行政から行政指導に従うかどうかは「任意」であるという説明が行われることは通常ないといわれています。
イ 行政指導の問題点
産業廃棄物設置許可申請等の手続においては,「事前協議」手続及び「事前協議」手続において「住民同意」が必要とされることがしばしばあります。これらは廃掃法上の設置許可の要件ではなく、「行政指導」として行われるのが通常です。
「事前協議」手続には設置許可申請における不備を整え、あるいは住民との紛争を防止し、円滑な事業の遂行を可能とする意義もあり、一概に事業者にとって不利益な手続であるとはいえません。そこで「事前協議」手続が直ちに違法であるとまではいえません。
しかしながら事業者が「事前協議」手続における指導に従うことができない旨を申し立てているにも関わらず、指導を継続し、あるいは住民同意を得ることを強請することがあれば行政指導が違法となる可能性があることに行政、事業者ともに留意すべきです。
なお行政手続法は「行政指導が口頭でされた場合において,その相手方から前2項に規定する事項を記載した書面の交付を求められたときは,当該行政指導に携わる者は,行政上特別の支障がない限り,これを交付しなければならない。」と規定しており(同法35条第3項)、行政指導の根拠法令、当該行政指導が法令上の要件に適合する理由等について書面の交付を求めることができ、行政はこれを拒むことは原則としてできません。
⑷ 通知
ア 「通知」の意義(強制力の有無)
「通知」とは、行政庁がある行為を特定の又は不特定多数の人に知らせる行為であり、強制力ないし法的拘束力はありません。すなわち通知は、地方自治法第245条の4第1項等の規定に基づき、地方公共団体の事務に関し、地方公共団体に対する「技術的助言」として「客観的に妥当性のある行為を行い、又は措置を実施するよう促したり、又はそれを実施するために必要な事項を示したりするもの」として行われます(平成23年7月12日「総務省における今後の通知・通達の取扱い」)。
イ 平成18年3月31日付け環廃産発第0603310001号本職通知と平成29年4月28日廃掃法施行規則の一部改正について
このように見てくると,平成18年3月31日付環廃産発第060331001通知をもって様式の統一を促したとしても「技術的助言」に過ぎないものとして法的拘束力を有しないため、様式の統一性を図るためには、法的拘束力を有するものによって規定する必要があり、自治体に対して様式の統一を義務付けるため施行規則を改正したということになります。
本稿ではより詳しく解説していきます。
是非ご覧ください。