INDUST2019年12月号に「欠格要件の連鎖と限界」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。

2019年12月号に「欠格要件の連鎖と限界」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/1910695/

今回は欠格要件について復習をしてみたいと思います。

欠格要件とは、廃掃法上の業務を行い、あるいは施設を設置するために必要な資格を欠くことをいいます。なお、「執行を終わり、又は執行を受けることがなくなった日から5年」とは、例えば、罰金刑を受けた場合は、罰金刑が確定した日から起算することとなります。

次に、申請の際の欠格要件と許可を受けた後の欠格要件は若干異なります。正確には、欠格要件が許可申請の際に問題となるものであるのに対し、許可を受けた後、ある一定の事由が発生すると許可取消となりますが、この許可取消原因と許可申請の際の欠格要件は若干異なります。すなわち、許可取消原因となる欠格要件は、許可申請の際の欠格要件よりも若干狭くなるのです。

また、かつては、aが欠格要件に該当するとaが役員を務めるA社が欠格要件に該当しA社の許可が取り消され、A社の役員bも欠格要件に該当し、bが役員を務めるB社も欠格要件に該当し許可が取り消され(第一次連鎖)、さらにB社の他の役員cが役員を務めるC社及びC社の他の役員dも欠格要件に該当し(第二次連鎖)、dが役員を務めるD社も欠格要件に該当し許可が取り消され(第三次連鎖)…というように、いわゆる「欠格要件の無限連鎖」が問題となっていました。
しかし、さすがにそれは行き過ぎである、との批判を受け、平成22年改正により欠格要件の無限連鎖は、法第25条から法第27条違反の罪に関して、かつ、上記の例でいうならばbが役員を務めるB社の許可取消まで連鎖する第二次連鎖にとどめられることになりました。

では、以下のような事例では誰がどこまで欠格要件に該当するでしょうか。
A社の役員aが不法投棄の罪で罰金刑を受けました。
役員aが罰金刑を受けてから1年後に、A社が破砕機を入れ替えるため変更許可申請をしたところ、県から、A社の役員が欠格要件に該当するためA社の変更許可をすることはできず、かつ、A社の廃棄物処理に係る許可をすべて取り消すとの通知が届きました。
A社には、ほかに役員bと政令で定める使用人cがいます。さらに、A社にはA社の資本の40%を出資する出資者d(個人)と30%ずつを出資するE社とF社があります。役員b、政令で定める使用人c、出資者dはそれぞれ他の廃棄物処理業を営む会社(B社、C社、D社)の役員を兼務しています。B社にはさらに役員e、役員fがいます。また、E社とF社もそれぞれ廃棄物処理業の許可を有しています。

(1) 役員a
役員aは不法投棄の罪により罰金刑を受けたため、欠格要件に該当します。

(2) A社
役員aが欠格要件に該当することにより、A社が「欠格要件に該当する者が役員等」になっていることになり欠格要件に該当し、許可取消となります。

(3) 役員b
役員bも許可が取り消された会社Aの役員であるので欠格要件に該当します。仮に、役員aの罪がマニフェスト規制義務違反等であって、法第25条から第27条に該当するような悪質性が重大な犯罪の類型に該当しない場合には、役員bは欠格要件に該当しません。ここは平成22年改正で欠格要件の連鎖が制限されたところです。

(4) B社
bが役員を務めるB社も「欠格要件に該当する者が役員となっている」ことにより欠格要件に該当し、許可が取り消されます。もっとも、欠格要件の連鎖はここで終わり、B社の役員eと役員fは欠格要件に該当しません。

(5) 政令で定める使用人c
政令で定める使用人とは、会社の「使用人」であって、「本店又は支店」の代表者または「継続的に業務を行うことができる施設を有する場所で、廃棄物の収集若しくは運搬又は処分若しくは再生の業に係る契約を締結する権限を有する者」をいいますが、この者についても欠格要件に該当する会社の「政令で定める使用人であること」により欠格要件に該当します。そして、この者が役員を務めるC社も同様に欠格要件に該当します。連鎖はここで終了します。

(6) 出資者d(株主)
出資者(会社に対して5%以上を出資する者、株主)であっても、会社に対して役員と同等の支配力を有するとされる場合、役員と同様に扱われます(みなし役員)。法は5%以上保有株主の報告義務を課しており、その趣旨からすると会社に対して5%以上を出資する者は原則として「みなし役員」とされるのが実務上の考え方です。
そのためA社のみなし役員としてdは欠格要件に該当します。その結果、dが廃棄物処理業を営む別の会社の役員となっている場合には、その会社も欠格要件に該当します。

(7) E社とF社(法人株主)
会社の資産の5%以上に相当する資金を出資する者は、上述のとおり原則として役員とみなされますが、役員とみなされるのは個人(自然人)に限り、例外的な場合を除いて、法人会社が5%以上に相当する資産を出資していたとしても役員とはみなされないという解釈が環境省よりなされています。すなわち、法人株主は、例外的な場合を除いて、「みなし役員」とはなりません。よってE社とF社は「みなし役員」とはならず、欠格要件に該当しません。

以上のように、欠格要件の連鎖は平成22年改正で制限されたものの、さまざまなケースにおいて重要な影響があることがわかります。特に、役員や使用人が他社の役員を兼任している場合や、個人株主が関わる場合には注意が必要です。許可事業者は常に欠格要件の有無について注意を払い、役員等の変更や社内体制の整備、適時の報告等を適切に行うことが重要です。

本稿ではより詳しく解説していきます。

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