INDUST2023年7月号に「欠格要件 その3(2022年の許可取消処分事例より)」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。

2023年7月号に「欠格要件 その3(2022年の許可取消処分事例より)」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/2412314/

今回は許可取消処分を受けた実際の事例について解説します。

1 2022年の欠格要件に該当することによる許可取消処分事例
2022年に欠格要件該当により許可取消処分を受けた件数は、全国の行政処分情報を調査したところ34件ありました。この中で最も多かったのは「役員が廃掃法令等違反で罰金以上の刑罰を受けた場合」、次いで「役員が禁錮以上の刑罰を受けた場合」です。

前回の連載で説明したように、会社の許可取消原因となる「役員等」には、会社法上の役員だけでなく、「業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者」、さらに「相談役、顧問その他いかなる名称を有する者であるかを問わず、法人に対し業務を執行する社員、取締役、執行役またはこれらに準ずる者と同等以上の支配力を有するものと認められる者(みなし役員)」も含まれます。このみなし役員には会社の株式を5%以上保有する株主も含まれます。当初は5%以上保有株主が欠格要件に該当するケースはレアケースではないかと考えていましたが、調査の結果、34件中4件(約11%)がこれに当たり、決してレアケースとはいえないことがわかりました。

2 役員が刑事罰を受けたことによって許可が取り消された事例
⑴ ランキング1位と2位

2022年の取消事例のランキングの1位が役員が「役員が廃掃法令等違反で罰金以上の刑罰を受けた場合」で、2位が役員が「役員が禁錮 以上の刑罰を受けた場合」です。注目すべきは「罰金以上」か「禁錮以上」かではなく、廃掃法令等の違反であるか否かです。

廃掃法は、廃掃法令等違反であるか、それ以外の法律違反であるかによって区別しており、廃掃法令等違反の場合(第一類型)は罰金以上の刑罰で欠格要件に該当しますが、それ以外の法律違反(第二類型)では禁錮以上の刑罰を受けた場合のみ欠格要件に該当します。これは廃掃法令違反に対する厳しい姿勢の表れといえます。

⑵ 「第一類型」にあたる犯罪の種類
第一類型に含まれる法令は多岐にわたります。具体的には、浄化槽法、大気汚染防止法、騒音規制法などの環境法令だけでなく、暴力団対策法や暴力行為等処罰法、さらに刑法の一部(傷害罪、現場助成罪、暴行罪、脅迫罪、背任罪など)も含まれます。

⑶ 暴力団対策法と「暴力行為等処罰法」
暴力団対策法(以下、「暴対法」といいます。)は、暴力団員による暴力行為等の不当な行為を防止するための法律ですが、暴力行為等処罰法は、暴力団員に規制の対象を限定することなく、集団的な暴行・脅迫・器物損壊・強要行為等を取り締まることを目的としています。

⑷ 「一部の刑法犯」
「一部の刑法犯」に粗暴犯が多く含まれることで、廃掃法が暴行脅迫行為等から廃棄物処理業を忌避しようとしていることがわかります。背任罪が含まれている理由は、かつて株主として株主総会等で威圧的発言等を繰り返し、それらを避けるために会社から金品を要求するい「総会屋」に対して、会社役員が金品を支払う行為が背任罪に当たるとされ、背任罪が反社会的勢力に資金を提供する行為として捉えられているためです。有名な事例として「蛇の目ミシン事件」があります。

「蛇の目ミシン事件」
「蛇の目ミシン事件」とは、蛇の目ミシン社(以下、「J社」といいます。)の株式を大量に取得したAがJ社の株式を暴力団に売却するなどとしてJ社の取締役Yらを脅迫し、Yらが「融資」の名目で約300億円という巨額の資金をAに交付した事件で、Yらの行為が会社に対する取締役としての役員の義務に反するとして責任を問われた事例。Yらの行為については、東京高裁平成12年3月31日において刑事責任(背任罪)が認められていましたが、J社の株主によって取締役としての責任が問われていた民事訴訟において(株主代表訴訟)、最高裁平成18年4月10日判決は取締役としての任務違反であるとして責任を認めました。

⑸ 「第二類型」にあたる犯罪の種類
第二類型は第一類型以外のすべての犯罪が対象で、禁錮以上の刑罰を受ければ欠格要件に該当します。2022年には道路交通法違反(スピード違反)、覚せい剤取締法違反、自動車運転処罰法違反などで欠格要件に該当したケースがありました。特にスピード違反は注意が必要です。制限速度80km/hのところを160km/hで走行し、懲役3か月の判決を受けたケースがあります。隣接業界である建設業でも、2022年に大手住宅メーカーの役員がスピード違反で執行猶予付き有罪判決を受け、会社に報告を怠ったため、会社が宅建業と建設業の許可を返納するという事件がありました。

刑事罰による欠格要件該当は、有罪判決が確定した時点で発生します。そのため、役員にスピード違反などの欠格要件該当可能性がある事由が生じた時点で役員が辞任するなどの対策を採っていれば、会社の欠格要件該当は免れられた可能性があります。

会社としては、役員等に対して欠格要件該当性が疑われる事由が生じた場合には速やかに報告するよう周知し、何が欠格要件に該当するのかについても認識を共有しておくことが非常に重要です。適切な情報共有と対応によって、不必要な許可取消リスクを回避することができるでしょう。

本稿ではより詳しく解説していきます。

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