INDUST2023年8月号に「欠格要件 その4(無限連鎖的取消とその制限)」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2023年8月号に「欠格要件 その4(無限連鎖的取消とその制限)」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/2423783/
今回は廃棄物処理業にとって最も恐れられている「欠格要件」について、特に「無限連鎖的取消」とその制限について解説します。廃棄物処理業者にとって欠格要件は最も恐ろしい存在です。いったん該当してしまうと、どんなに優良な大企業でも、すべての都道府県における一般廃棄物処理業・産業廃棄物処理業の許可が一発で取り消されてしまうからです。この恐怖感は平成15年廃棄物処理法改正で欠格要件該当時の「義務的取消」が定められてから特に強くなりました。この改正により、欠格要件に該当した場合は「その許可を取り消さなければならない」とされ、行政に裁量の余地がなくなったのです。
その結果、許可取消の「無限連鎖」という現象が生じました。例えば、A社の役員aが欠格要件に該当して許可取消になると、A社と役員bを共通にするB社も許可取消になり、B社と役員cを共通にするC社も許可取消になる…といったように、役員を共通にする限りドミノ倒しのように許可取消が続いていく現象です。
この連鎖的取消が生じる法的根拠は以下の構造によります。まず役員aが欠格要件に該当すると、会社A自体も欠格要件に該当して許可取消となります。次に会社が欠格要件に該当すると、その当時および聴聞通知前60日以内に役員であった者b全員が欠格要件に該当します。さらに欠格要件に該当した役員bが役員を務める法人Bも欠格要件に該当します。このサイクルが無限に続くわけです。
この無限連鎖を生んだ平成15年改正は、不適正処理防止のための厳罰化の流れの中で生まれました。不適正処理が起きると環境回復に膨大な時間と費用を要するため、その防止は極めて重要です。過去には行政指導を繰り返すうちに改善されないまま環境汚染が進行した事例もあり、行政の対応格差による不信感や不公平感を避けるため、一律に「許可取消」とする制度が採用されたのです。
しかし、この無限連鎖的取消には批判も多く、役員を共通にしていただけの優良業者までが巻き添えを食い、いたずらに経営リスクを増大させるとの指摘がありました。そこで平成22年改正により、連鎖は重大な違反があった場合に限定されることになりました。
具体的には、①欠格要件に該当するに至った事由が廃棄物処理法違反でかつ違反が重大でない場合には、連鎖そのものが発生しないこととなりました。例えば役員が道路交通法違反で禁錮以上の刑に処された場合、その役員が務める法人の許可は取り消されますが、法人の他の役員には欠格要件が及ばないため、連鎖は発生しません。
②一方、不法投棄などの重大な廃棄物処理法違反の場合は連鎖自体は否定されませんが、第一次連鎖までに限定されました。具体的には、役員aの不法投棄罰金刑により法人Aが許可取消になり、法人Aの役員bも欠格要件に該当して、役員bが務める法人Bも許可取消になります。しかし、法人Bの役員cは欠格要件に該当しないとされ、そこで連鎖が止まります。
こうした許可取消が連鎖する「重大な違反」とは、廃棄物処理法第25条から第27条により処罰される行為です。これには無許可営業、不法投棄、不法焼却といった違反が含まれます。
平成22年改正で連鎖は制限されましたが、重大な廃棄物処理法違反の場合にはなお第一次連鎖の可能性があります。そのため連鎖的取消を防ぐ対策として、関連会社間で役員を共通にしないこと、処理業を行わないホールディングス会社を上位に置くことなどが考えられます。しかし最も基本的かつ重要な対策は、会社が従業員を含めて違法行為を行わないことです。これこそが欠格要件を避ける最も確実な方法といえるでしょう。
本稿ではより詳しく解説していきます。
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