INDUST2025年10月号に「令和7年6月24日『今後の廃棄物処理制度の検討に向けた中間とりまとめ』その3 災害廃棄物について」が掲載されました
全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2025年10月号に「令和7年6月24日『今後の廃棄物処理制度の検討に向けた中間とりまとめ』その3 災害廃棄物について」が掲載されました。
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今回は、災害廃棄物への対応についてご紹介したいと思います。
見直し検討事項
ア 現行制度について
(ア)平成27年改正
災害廃棄物は、事業に伴って生じたものではありませんので、一般廃棄物であり、一般廃棄物として処理されるのが原則ですが、東日本大震災の災害において、同時かつ多量に発生する災害廃棄物の処理が各市町村、一般廃棄物処理業者による一般廃棄物処理施設における処理では間に合わないことを経験しました。
そこで、平成27年改正により、非常災害時において、一般廃棄物を産業廃棄物処理施設で処理するについては、事後の届出で足りるとされました。これにより、各自治体と各廃棄物処理(資源循環)協会とが協定を締結する等、平時より緊急災害発生時に向けて準備を行う体制が整えられました。
(イ) 令和2年改正
令和2年改正により、廃棄物の種類にかかわらず「同様の性状」を有する廃棄物については、廃棄物処理施設の種類にかかわらず処理することができるという規定が新設されました。例えば、平時は産業廃棄物として処理される廃油や事業所の廃プラスチック類が災害時に一般廃棄物として大量発生した場合、産業廃棄物業者でも処理可能となり、災害廃棄物については実質的に一般廃棄物と産業廃棄物の区別が取り払われたともいえます。
イ 制度的措置の必要性
(ア) 自治体のマンパワー不足に対する支援
災害の規模や被災自治体の体制に応じて、平時・発災時に全国各地の自治体へ適時適切な支援を継続的かつ安定的に行う仕組みが必要とされています。
(イ) 災害特例措置の拡充の必要性
災害廃棄物処理計画について、都道府県は100%策定済みですが、市町村では86%に留まっており、策定済みの市町村でも仮置場候補地の選定、水害の被害想定、民間団体との協定締結など重要事項の反映が不十分な状況にあります。
(ウ) 民間の最終処分業者に対するインセンティブ
災害時には市町村の処分場だけでなく民間の処分場も活用する必要がありますが、民間処分場が災害廃棄物を受け入れると施設の処理能力が大幅に減少し、通常事業に支障をきたすおそれがあるため、受入れを促進する制度的なインセンティブが必要とされています。
ウ 今後検討における方向性
(ア) 各自治体に対する全国横断的かつ継続的な支援措置の必要性
全国横断的かつ継続的な支援措置として、災害廃棄物処理計画の策定・改定、民間事業者との協定締結、研修・訓練の実施などを全国横断的に支援する必要があります。また、災害発生時には廃石綿等の特別管理が必要な廃棄物や灯油等の処理先確保が困難な廃棄物を含む災害廃棄物の適正処理、公費解体に係る事務、施工監理などを迅速・円滑に行う必要がありますが、被災自治体が単独で対応することは極めて困難です。そのため、これらの支援機能を全国共通で安定的かつ継続的に確立・確保し、専門支援機能を制度的に位置づける必要があるとされています。
(イ) 市町村の災害廃棄物処理計画の制度化と各団体との支援協定の制度化及び特例措置の拡充
市町村の災害廃棄物処理計画と支援協定の制度化により、平時の一般廃棄物処理と発災時の災害廃棄物処理を連動させて実効性を高めるとともに、適正処理を前提としつつ円滑・迅速な処理のため災害廃棄物の特例措置を拡充する必要があるとされています。
エ 検討事項
(ア) 公費解体・災害廃棄物処理を横断的に調整支援する専門支援機能の規定整備
損壊家屋の所有者が様々な事情で解体できない場合、放置により地域の安全性が損なわれるおそれがあります。そこで、市町村が所有者に代わって解体・撤去工事や災害廃棄物処理を行う際、これらを横断的に調整支援する専門支援機関に関する規定整備が検討されています。公費解体は現実的で緊要性の高い施策であると考えられます。
(イ) 一般廃棄物処理計画・災害支援協定に基づく災害廃棄物処理に係る特例措置等の整備
① 市町村の災害廃棄物処理計画の作成の義務化
市町村の災害廃棄物処理計画の作成を義務化し、平時の一般廃棄物処理と発災時の災害廃棄物処理の一体性と連動性を確保するため、法定計画である一般廃棄物処理計画の規定事項に非常災害時の廃棄物処理を追加することが検討されています。
② 市町村の民間事業団体との災害支援協定締結の努力義務化
市町村による民間事業団体との災害支援協定締結を努力義務化し、災害の規模や被災自治体の体制に応じて柔軟な対応が可能となるよう都道府県と連携した広域的な枠組みでの協定締結を可能とすることが検討されています。
③ 再委託の合理化のための災害特例措置の検討
産業廃棄物では一定要件下で認められている再委託が一般廃棄物では認められていない点について、災害支援協定に基づき民間事業者が委託を受けた災害廃棄物処理を行う場合に再委託を可能とする災害時特例措置が検討されています。
④ 産廃処理施設設置者の一般廃棄物処理施設の設置手続きの簡素化
事業者が市町村との災害支援協定に基づき産業廃棄物と同種の災害廃棄物を処理する場合について、一般廃棄物処理施設の設置手続きを簡素化する災害時特例措置の拡充が検討されています。
⑤ 国の基本方針、都道府県廃棄物処理計画及び一般廃棄物処理計画の規定事項に公費解体工事に関する事項が含まれるべきこと
(ウ) 廃棄物最終処分場での災害廃棄物の受入容量確保に係る特例制度の創設
災害廃棄物を受け入れる能力を有する廃棄物最終処分場に対する都道府県知事による認定制度及び認定を受けた者への優遇措置を創設するとともに、災害発生時に一定基準を満たす場合、都道府県又は市町村が認定を受けた処分場設置者に対して災害廃棄物の受入れを求めることができる制度が検討されています。
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