INDUST7月号に「環循規発第2104141号 令和3年4月14日付『行政処分の指針について(通知)』」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。

2021年7月号に「環循規発第2104141号 令和3年4月14日付『行政処分の指針について(通知)』」が掲載されました。
https://www.fujisan.co.jp/product/1281682499/b/2133815/

「行政処分の指針」とは、環境省が、各都道府県及び各政令市産業廃棄物行政主管部(局)長に対して、行政処分を行うにあたっての指針を、「技術的な助言として」通知しているものです。今回は、令和元年6月に「成年被後見人等の権利の制限に係る措置の適正化等を図るための関係法律の整備に関する法律」により廃掃法上の欠格要件より成年被後見人の宣告を受けたもののであることが削除されたことを受け、必要な見直しを行ったとされています。本稿では、何が見直されたのかについてみていきたいと思います。

1 総論部分
ア 行政処分の迅速化について
改訂前は、単に「違反行為を把握した場合には、速やかに行政処分を行うこと」とされていましたが、今回の見直しでは、「違反行為を把握した場合」ではなく、「違反行為が疑われる場合」には、速やかに事実確認を行い、違反の事実が認定できた際には、速やかに行政処分を行うこととされました。「速やかに行政処分を行う」こととされる趣旨は、行政が違法行為を把握しながら「悪質な業者が営業を継続することを許し、断固たる姿勢により法的効果を伴う行政処分を講じなかったこと」により、豊島事件、青森・秋田県境大規模不法投棄事件のように、「一連の大規模不法投棄事案を発生させ、廃棄物処理及び廃棄物行政に対する国民の不信を招いた大きな原因ともなっている」ことの反省に基づいています。この反省が、そもそも「行政処分の指針」を定めた趣旨とされています。

イ 行政指導について
行政指導は「あくまで事実行為」であり、それ自体は事業停止処分、許可取消処分等の「行政処分」としての効果を有するものではないため、違反行為の継続を許し、生活環境保全上の支障の拡大を招くことがあることが強調されています。また、違法行為を行った法人の清算が結了し、または、破産手続きが終結した際には、当該法人の法人格が消滅する結果、行政処分自体を行うことができなくなってしまうので、迅速な対応の必要があるとしています。不法投棄等の不適正処理をする法人はしばしば財産状況も悪化していることもあり、注意が必要です。

ウ 事実認定について
廃棄物性の判断が都道府県間で異なるときは、業者の混乱を招き、また、法の下の平等にも反します。そこで、都道府県間で廃棄物該当性の判断が異なる場合には、関係都道府県間で連絡をとり判断の統一化を図ること、判断の調整が難しい場合には環境省に相談することが推奨されています。従来、通知の末尾には必ず当該通知は「助言」であることが付言されていますが、通知の本文中に環境省への相談が推奨されており注目されます。都道府県、政令市間の判断の統一は喫緊の課題です。

2 事業停止処分及び許可取消処分について
ア 役員と「同等以上の支配力を有するものと認められる者」の意義
従前の「行政処分の指針」では、役員と「同等以上の支配力を有するものと認められる者」について、「経営方針を単独の意思で決し得るような強大な権限を有する者であることまでは要しない」とのみ触れられているにすぎませんでした。今回の指針では、「役員を辞任した者についても、株式の所有や債権等を通じて、なお「同等以上の支配力」を有する場合があることに留意されたい」旨、また、犯罪行為を行った結果、欠格要件に該当する刑が確定する前に、役員等を辞任した者については、当該元役員等が「役員等と同等以上の支配力」を有していないかよく確認されたいとしています。

イ 第7条第5項第4号ヘの「(当該事業の廃止について相当の理由がある者 を除く。)」の趣旨
第7条第5項第4号ヘは、許可取消処分に先立つ告知聴聞が行われることの通知があった後に事業の廃止届を提出しても、欠格要件に該当することを免れないとしています。この規定の趣旨は、許可取消処分に先立つ告知聴聞の通知を受けた後、告知聴聞の前に事業廃止届を提出することによって欠格要件に該当することを免れようとすることを防ぐため、告知聴聞通知を受けた後は、事業廃止の届出をしても欠格要件に該当することを免れないとするものです。本見直しは、「当該事業の廃止について相当の理由がある」場合には、欠格要件に該当しないものとして扱うことを認めています。

3 措置命令
今回の見直しでは、清算結了または破産手続きの終結によって、当該法人が法人格を失う結果、行政処分を免れ、または措置命令の対象となることを免れるのを許さないこととしています。

4 排出事業者に対する措置命令
排出事業者が排出事業者として講ずべき措置を採っていない場合には、排出事業者に措置義務を採らせるのが適当であるとされますが、排出事業者として講ずべき措置を採っているかどうかの判断にあたっては、平成29 年6月20日付「排出事業者責任に基づく措置に係る指導について」(環廃産発第1706201号)及びこの通知に添付の「排出事業者責任に基づく措置に係るチェックリスト」を参考とされるべきとしています。

本稿では表を使用しながら、それぞれの見直しの趣旨について解説していきます。

是非ご覧ください。

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