過積載と判例

過積載によって懲役刑を受けた場合には、
たとえそれが執行猶予付きのものであっても
懲役刑を受けた者は欠格要件に該当します。

では、過積載によっ懲役刑を受けることはあるのでしょうか。
過積載によって懲役刑が出た裁判例をご紹介したい。

【事例1】
【事案の概要】

Xは、最大積載量の3倍を超える合計1万8030kgの木材を横向きに積載し,
同木材をワイヤーロープ1本で緊縛したのみの不安定な状態で同車の運転を開始したところ、
…県田村市常葉町堀田字八升栗地内の下り勾配で
連続して左右にカーブする道路を時速約20kmで進行中,
同車のフットブレーキが効かなくなった。


これにより、左にカーブする道路を時速約40kmで進行し、
同車荷台に不安定な状態で積載していた前記木材を道路右側に落下させた。

その結果、Xの通過を待つために進路右側端で停止していた
A(当時63歳)運転の普通貨物自動車に多数の前記木材を衝突させ,
同車両同乗者B(当時44歳)に加療約2週間を要する見込みの頚部挫傷の傷害を,
同C(当時33歳)に全治まで約4か月を要する見込みの中枢性頚髄損傷等の傷害を,
同D(当時63歳)に加療約2週間を要する見込みの頚椎捻挫等の傷害を,
同E(当時60歳)に加療約1か月間を要する頭部打撲等の傷害を,
同F(当時20歳)に加療約2週間を要する見込みの顔面打撲挫創等の傷害を
それぞれ負わせるとともに
前記Aに多発外傷の傷害を負わせ,出血性ショックにより死亡させた。

【判決】

懲役2年

【事例2】
【事案の概要】

Yは、最大積載量を2倍から3倍を超える過積載を日常的に行っていたものであるが、
(過積載として起訴事実は6件)、
ある日、最大積載量の3倍を超えるがれき等を積載した状態で
車両(大型トラック)を運転し(=過積載の事実)、
また、車両の日常点検を行っていなかったため、
タイヤとホイールハブの締結のためのボルト8本のうち
2本が破断していることに気が付かないまま運転を開始し、
高速道路を走行中、残りの6本のボルトがすべて破断したことにより、
車輪を脱落逸走させた。

これにより、Aが運転する車両のフロントガラスに脱落した車輪を直撃させ、
同フロントガラスを破壊させ、同車輪をAに直撃させ、
Aを脳挫傷により即死させたほか、
同乗者であるB、C、Dに対してそれぞれ傷害を負わせた
(=自動車運転過失致死傷の事実)。

【判決】

過積載の罪に関して、罰金20万円
自動車運転過失致死傷の点について、1年8ヵ月の禁錮刑

【解説】

人の死傷の結果が生じているのは事例1も事例2も同様です。
事例2は、罪状として相当重いと思われるにもかかわらず、
過積載の点については、罰金刑にとどまっています。

事例1では、過積載を行ったことが、直接人の死傷の結果につながった
(積載物を人に直撃させ、人を死亡させた)のに対し、
事例2では、過積載の事実はあったものの、
過積載であったために人の死傷につながったわけではありませんでした。
人の死傷の直接の原因は過積載ではなくボルトの破断にありました。
そのため、過積載の事実については罰金にとどまったといえるかもしれません。

事例1と事例2からは、過積載の事実のみでは、
懲役刑ないし罰金刑を受けるということは、
相当稀であるということがいえそうです。

もっとも、過積載については、刑事罰のみならず行政処分を受ける場合があり、
懲役刑等を受ける可能性が低いからといって過積載をおざなりにすることはできません。

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