コモンのギモン(13)「産業廃棄物処理業者のイメージ」

「産業廃棄物処理業者のイメージ」
非常勤顧問・上智大学教授 北村喜宣
環境法の受講生に対して、定期的にアンケートを実施しています。「産業廃棄物処理業
者に対してどんなイメージを持っていますか」というお題です。
ネガティブイメージは、毎回一定割合あります。多いのは、基本的には、3Kイメージで
す。不法投棄事件の報道も、ネガティブイメージの醸成に寄与しているようです。実行犯
が産業廃棄物処理業者とはかぎらないのですが、「法の抜け穴を探してあまり良くないこ
とをする人たち」というのは、こうした報道から連想しているのでしょうか。廃棄物処理
法の講義をする際には、豊島事件に触れますが、それも一因となっているのかもしれませ
ん。
「私の高校の近くに新たに産業廃棄物処理場ができたのですが、ヤクザ関係の人がお金
のためにやっているそうです」という記述がありました。「お金のためにやっている」の
は誰でもそうですが、法的にはありえない「ヤクザ関係の人」という地域の認識が何に由
来するのかは興味深いですね。「中学生のころ、産廃業者をしている家の同級生がいたが
両親ともガラが悪く、高級な車を乗り回していた」というのは、それなりに説得力があり
ます。2023年に公開された映画「ヴィレッジ」の影響をあげる学生もいました。
もっとも、こうした一方的な印象のみを述べるものは、それほど多くありません。上智
大学法学部では、環境法関係の授業が10以上あり、そのなかでは、たとえば、廃棄物処理業者をゲストスピーカーにお招きしてお話しをうかがうなどの取組みもしています。それを通して、「彼は自分の仕事に誇りを持っていた。また、業者の人々は自分たちがあまり良くないイメージを持たれていることを自覚しているため、仕事中の対応や態度などに気を遣っている」という認識を示す学生もいます。「処理業者は社会的地位が低く見られがちであり、ごみ処理の委託契約等の場において悪条件を強いられてしまいそうなので、ごみ処理という立派な役目を果たす彼らによりスポットライトが当たる社会になってほしい」という認識を示す学生もいました。「処理業者がいなければこの社会は絶対にきれいにならないので必要不可欠な存在」「縁の下の力持ち」というコメントもあります。
そもそもの問題なのですが、1970年制定の廃棄物処理法によって生み出された「廃棄物」という表現が、半世紀以上を経過した現在において必要なのかを考え直すべきです。言葉一つというわけではありませんが、学生のイメージは随分と変わるように感じています。