コモンのギモン(14)「勝手な適用除外?」

「勝手な適用除外?」
非常勤顧問 北村喜宣
何が規制の対象になるのかは、関係者にとっては重大事です。法律で明記されるべきものですし、それが無理なら、その明確な委任を受けた政令で規定されていなければなりません。
廃棄物処理法では、2条4項1号に規定される6品目とその委任を受けた同施行令2条に規定される14品目の合計20品目が、産業廃棄物であると指定されています。ところが、それとは別の次元で、「これは含まない」というように、行政の独自解釈によって適用除外が決められているものがあるのです。
昭和46年に厚生省環境衛生局長によって出された「廃棄物の処理及び清掃に関する法律の施行について」という古い通達(現在では「技術的助言」と言います。)があります。この昭和46年通達は、「廃棄物の定義」を解説する部分において、「なお、次のものは廃棄物処理法の対象となる廃棄物でないこと。」として、3つを具体的にあげています。
「ア 港湾、河川等のしゆんせつに伴つて生ずる土砂その他これに類するもの」「イ 漁業活動に伴つて漁網にかかつた水産動植物等であつて、当該漁業活動を行なつた現場附近において排出したもの」「ウ 土砂及びもつぱら土地造成の目的となる土砂に準ずるもの」がそれです。
このうち、イは、問題ないように思われます。漁業者は昔からそうしたことをしていたのであり、そうした排出物もそれほどの量でないかぎりは、腐敗などして自然に戻ります。
これに対して、アとウについては、大いに問題があります。水分を大量に含む浚渫土砂は、産業廃棄物である「汚泥」に該当するはずです。土砂は産業廃棄物として限定列挙されていませんから、不要物である以上、一般廃棄物に該当するはずです(第7回でもふれました)。
ところが、昭和46年通達は、「廃棄物ではない」というのです。「なんで?」ということになります。
それらを廃棄物処理法のもとでの規制から除外するかどうかは、政策判断の問題ですが、それを可能にするには、①法律または政令でそう規定されている、②法律を読み込むことでそう解釈できる、の2つしか方法はありません。
ところが、アとウに関するかぎり、昭和46年通達は、そのいずれでもないのです。行政は、自ら立法者であるかのごとく勝手に振る舞っているようにみえます。