コモンのギモン(16)「まったく新しい環境法の誕生」

「まったく新しい環境法の誕生」

非常勤顧問 北村喜宣

 上智大学法科大学院では、この数年、毎年春学期に、「資源循環戦略の最前線」を全体テーマとして、ソフィア・エコロジー・ロー・セミナー(SELS)を開催しています。

 先日、環境省環境再生・資源循環局長の角倉一郎さんから、「再資源化事業等高度化法の意義と今後の展望」と題するお話しをうかがいました。環境法研究20号に掲載されたご論文を踏まえたもので、局長ご就任後初の講演でした。

 論文では、「初めての法律」「従来にない、新しい方向性を打ち出した法律」「転換点となる法律」という表現がされています。カーボンニュートラルとサーキュラーエコノミーを国家戦略として進めるうえでのエンジンのひとつとなる法律であるという認識を強く持ちました。

 これまで、産業廃棄物処理業者には、処理を委託された廃棄物をどのように処理するのかについて、相当に大きい経営上の裁量がありました。もちろん、処理基準を遵守した適正処理をしなければなりませんが、それ以上の法的要求はされてはいませんでした。

 当面は、年間1万トン以上を処分する特定産業廃棄物処分業者に限定されますが、環境大臣が定める「判断の基準となるべき事項」に則した対応が求められます。その方向は、「再資源化×高度化」です。

 こうした法政策の背景には、再生品使用割合を強制するEUの動きへの対応やレアメタルをめぐる資源ナショナリズムの動きがあります。こうしたグローバルな状況に適応していかなければ、日本という国家や日本企業が国際的に取り残される結果になってしまう。そうした危機意識が根底にあります。産業廃棄物の処理を、処理業者の裁量に完全に委ねているわけにはいかなくなってきたのです。牧歌的時代は過ぎ去ったということでしょうか。

 高度化法においては、処分業者が再資源化業者として大きく飛躍するための仕組みが規定されるほか、大胆な財政措置も用意されています。産業廃棄物処理業界のための「業法」では決してありません。護送船団方式ではなく、ついてこれない業者の淘汰・統合もやむなしという方向に舵を切ったようにもみえました。カーボンニュートラルや資源循環産業の高度化という観点を持たないこれまでの廃棄物リサイクル法に横串を差し込んだのが、高度化法なのです。

 角倉さんのお話しを聞いていて、「すべての副産物は資源物であり、将来的には、少なくとも最終処分という概念はなくなるのかもしれない」という気がしてきました。

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