コモンのギモン(9)「火事で焼けた家屋は廃棄物か?」

火事で焼けた家屋は廃棄物か?
非常勤顧問 北村喜宣
私は、いくつかの自治体で、「空家等対策の推進に関する特別措置法」(空家法)の実施に関わっています。空家法のもとでは、著しく保安上危険となるおそれがある空家である特定空家等の所有者に対して、市町村長が勧告や命令を出すことができるのですが、その判断にあたってのアドバイスをする委員会の委員としてです。
委員会で扱った事案に、火災で焼けた住宅があります。全焼して跡形もなくなっていれば建築物ではないため対象にはなりませんが、2階部分は相当焼失しているけれども1階部分はそれなり残っている状態のものが問題になります。火災により、居住者が死亡した事案が多いようです。
「残っている」といっても、被害はかなりあります。また、消火活動によって大量の水をかぶっていますから、とても居住に耐える状態ではありません。だからこそ、非居住であって空家法の適用が問題になるのです。
結局、特定空家等と認定され、所有者に対して、「指導→勧告→命令→代執行除却」と進むのですが、こうした事案に接するたびに抱く疑問です。「焼け残ったものはそもそも廃棄物ではないか」。
所有者にとっては「想い出が詰まった家」であるとしても、修繕工事をして居住できる状態にするには、新築以上の費用がかかります。その場所で居住しようと思えば、解体をして再建築をするほかありません。もちろん、所有者は積極的に「捨てた」わけではないですし「不要物」と言い切るのは心情的にも躊躇われます。
しかし、周辺住民からすればどうでしょうか。廃棄物性を判断するモノサシである総合判断説の5要素(性状、排出の状況、通常の取扱形態、取引価値の有無、占有者の意思)がドンピシャ適用できる対象ではありませんが、「廃棄物の不法投棄がされているのと同じで生活環境に支障が出ている」と考えるかもしれません。
廃棄物だとして、産業廃棄物か一般廃棄物のどちらでしょうか。解体業者が工作物の解体により生じさせたなら産業廃棄物ですが、もともと廃棄物ならそうはいえません。相続人など現在の所有者が出した一般廃棄物でしょうか。それなら粗大ゴミとして、市町村に処理責任があります。
ややこしいですので、空家法で対応するのが無難な気もします。