「総合判断説」の要素⑤「占有者の意思」とは
(「総合判断説」の総論については、「『総合判断説』とは」↓をご覧ください)
総合判断説 廃棄物 判断要素 (shibatalaw-ginza.jp)
「総合判断説」の判断要素の五つ目の要素である「占有者の意思」とは、
「適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思が認められること、
又は放置若しくは処分の意思が認められないこと」
を意味します。
ここにいう「占有者」とは、物を手元から放す者(会社)をいいます。
すなわち、物を手元から放す者にとって
物を手元から放すということが、
物を適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思があると認められること、
又は、放置若しくは処分する意思とは認められないこと
を意味します。
また、この意思は、「占有者」の主観面ではありますが、
このような意思(主観)を有していたか否かを客観的に判断する
とされています。
「主観面を客観的に判断する」、とは混乱しそうですが、
たとえば、「再生土を売却する」という契約のもと、
「再生土」を出荷している業者Aがいるとします。
この「再生土」は建設廃棄物の中間処理の過程で発生する(製造される)
ものであるとします。
再生土は建設廃棄物の中間処理の過程で発生するものですから
廃棄物を処理すると製造されてしまうわけで
「出荷」しないと自社倉庫内に溜まって保管容量を
超過してしまいます。
そこでA社は、自社の100%子会社であるB社に
本件再生土を売却することにしました。
B社はA社の決定を拒めません。
A社はB社に本件再生土を1㎥あたり100円で売却しました
(B社はA社に1㎥あたり100円の支出)。
同時にA社はB社に対して売買管理費用として
1㎥あたり1500円を支払いました。
つまり、A社がB社に1㎥の再生土を販売するごとに
A社はB社に1400円を支払っていることになります。
また、B社は再生土を購入した後の用途があったのか、
というと用途はなく、単に倉庫に保管していただけ、
という状況でした。
また、AとBとの本件再生土の売買契約締結時において
AはBに再生土の用途がないことを知っていました。
このような状況にいおいて、Aは占有者として本件再生土を
「適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思がある」
といえるでしょうか。
このような客観的状況から判断すると、
Aには占有者の意思として
「適切に利用し若しくは他人に有償譲渡する意思がある」
とは、認められないといえます。
「総合判断説」とは、このように
①「物の性状」、
②「排出の状況」、
③「通常の取扱い形態」、
➃「取引価値の有無」、
⑤「占有者の意思」
を総合的に考えて、当該物が廃棄物かどうかを判断する、
という考え方です。
各判断要素①〜➃についてはすでにコラムに書いておりますので
気になる方は参照してみてください。
① 総合判断説の要素①「物の性状」とは
→「総合判断説」の要素①「物の性状」とは | 弁護士法人 芝田総合法律事務所 (shibatalaw-ginza.jp)
② 総合判断説の要素②「排出の状況」とは
→「総合判断説」の要素②「排出の状況」とは | 弁護士法人 芝田総合法律事務所 (shibatalaw-ginza.jp)
③ 総合判断説の要素③「通常の取扱い形態」とは
→「総合判断説」の要素③「通常の取扱い形態」とは | 弁護士法人 芝田総合法律事務所 (shibatalaw-ginza.jp)
➃ 総合判断説の要素④「取引価値の有無」とは
→「総合判断説」の要素④「取引価値の有無」とは | 弁護士法人 芝田総合法律事務所 (shibatalaw-ginza.jp)
⑤ 総合判断説の要素⑤「占有者の意思」とは
→「総合判断説」の要素⑤「占有者の意思」とは | 弁護士法人 芝田総合法律事務所 (shibatalaw-ginza.jp)