イマドキの「不法投棄」(従業員による不法投棄)
「不法投棄」って聞くと皆さんはどんなものをイメージされますか?
山や空き地に廃棄物を捨ててくる、そんなイメージを持たれる方が多いと思います。
ところが、現実には、そのような不法投棄もなくはないと思いますが
そんな分かりやすいものばかりではありません。
むしろ不法投棄かどうか分かりにくい不法投棄の方が多いかもしれません。
では、どのような不法投棄が行われているのでしょうか。
パッカー車汚水投棄事件
<事案の概要>
X社は家庭から出るごみ(家庭系一般廃棄物)を集めて
清掃センターへ持って行くという業務(収集運搬業務)を行っている会社でした。
Aは、X社のドライバーとして、家庭系一般廃棄物を集める業務を担当していました。
ゴミを収集する車をパッカー車といいますが、
ゴミを集める際、作業員の方がパッカー車に投げ入れるようにして
ゴミを集めているのをみたことがあるのではないでしょうか。
上のイラストのように、パッカー車の後部は開くようになっていて、
後部はゴミを投入しやすいように受け皿のようになっています。
そして、ある程度パッカー車内にゴミが溜まると、
ゴミから流れ出た廃液(浸出液)が溜まり、
受け皿部分にも溜まってきてしまうことがあります。
Aは、ゴミをパッカー車に投入する際、
受け皿に溜まった浸出液が跳ね上がってしまうのが
いつも気になっていました。
というのも、Aが担当する区域は繁華街が近く、
朝、ゴミを収集している作業のすぐ側を
スーツを着ているサラリーマンが通るのです。
ゴミをパッカー車に投げ入れる際、浸出液が
サラリーマンにかかってしまったら申し訳ないな~、と
Aは考えていました。
そして、ある時、
「そうだ、浸出液が溜まったら、道路の側溝に流せばいいんじゃないか」
と思いつきました。
そうすれば、浸出液が洋服にかかってしまうこともありません。
そこで、Aは浸出液がある程度溜まったら、
道路わきの側溝に流すようにしていました。
そんなある日、いつものように道路わきの側溝に
浸出液を流していたところ、Aは警察官から何をしているのか、
と声をかけられました。
Aは、「浸出液を側溝に流している」と答えたところ、
警察まで来てくれ、といわれ、事情聴取を受けました。
Aの行為は「不法投棄」に当たる、というのがその理由でした。
果たして、Aの行為は不法投棄に当たるのでしょうか。
<事案の結論>
結論としては、「不法投棄」に当たるというのがその答えです。
そして、不法投棄に当たる場合には、刑事起訴されれば
Aの行為は「5年以下の懲役、若しくは1000万円以下の罰金、
又はこれの併科(両方)」が科されるおそれがあります
(廃棄物処理法25条1項14号)。
これがもし、会社の指示でやっていたと受け取られれば
会社も「両罰規定」規定により、やはり刑事起訴されれば
「3億円以下」の罰金を受ける可能性があります
(廃棄物処理法32条1項1号)。
そうなれば、会社の欠格要件該当、許可取消は目前です。
幸い、Aの行為は、不起訴となり、おとがめなし、
となりました。
会社にも影響はありません。
<今後のために>
Aにはもちろん「不法投棄」のつもりはありませんでした。
しかし、ここで考えてほしいのは、
このようにA自身に「不法投棄」をするつもりがない場合であっても
「不法投棄」となってしまう場合があるということなのです。
そして、これが「会社ぐる」み、と判断されかねない
ということなのです。
従業員による「不法投棄」を防ぐためにはどうしたらよいのか、
「会社ぐるみ」と判断されないためにはどうしたらよいのか
検討することが必要です。
従業員の不法投棄により「会社ぐるみ」と判断されないためには
「両罰規定」で会社が巻き込まれないために | 廃棄物処理法とともに50年 | 弁護士法人 芝田総合法律事務所 (shibatalaw-ginza.jp)をご参照ください。