INDUST2024年4月号に「行政手続と廃棄物処理法 その8 ~許可取消処分取消請求(認容事例1)~(平成19年12月21日徳島地判)」が掲載されました

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。
2024年4月号に「行政手続きと廃棄物処理法 その8 〜許可取消処分取消請求(認容事例1)〜(平成19年12月21日徳島地判)」が掲載されました。
zensanpairen.or.jp/books/indust/14801/
今回は、許可取消処分に対する取消訴訟で、処分要件を欠くとして許可取消処分が違法とされた事例を紹介します。
この事例は、木製品製造業者であるX社が自社工場内で発生した木くずを燃焼させて熱源として利用していたところ、徳島県知事から廃棄物処理法の規制に適合しないとして設備の改善命令および使用停止命令を受け、さらにそれに従わなかったとして施設の設置許可取消処分を受けたというものです。X社は許可取消処分の取り消しを求めて訴訟を提起しました。
本件の核心的争点は、自社工場内で発生した木くずが「廃棄物」に該当するかどうかでした。この判断は、許可取消処分の適法性を左右する決定的な問題でした。裁判所はまず、廃棄物処理法上の「廃棄物」の意義について、最高裁平成11年3月10日判決(いわゆる「おから事件」)を引用し、「自ら利用し又は他人に有償で譲渡することができないために事業者にとって不要になった物」であり、その該当性は①物の性状、②排出の状況、③通常の取扱い形態、④取引価値の有無、⑤事業者の意思等を総合的に勘案して決すべきとする「総合判断説」に立脚しました。
そのうえで、各判断要素について詳細に検討しています。「物の性状」については、本件木くずが実際に工場の熱源として利用されており、ボイラーの燃料として必要な品質を備えていると認定しました。また、密閉炉に定量供給される設計であり、飛散や流出の恐れもないとしています。
「排出の状況」については、製造工程から発生する性質上、常に一定量が排出されるわけではないものの、有効活用できる物として常時発生することを前提に需要が織り込まれていると評価しました。「通常の取扱い形態」では、本件が排出事業者自身による利用であることから、「有償譲渡の実績や市場の形成が必要であるとはいえない」と判断しました。
特に注目すべきは、裁判所が環境配慮の観点にも言及している点です。地球温暖化防止や循環型社会形成の観点から、「バイオマス」資源の有効活用が注目されていることや、複数の都道府県で自社の木くずを燃料として使用する場合を廃棄物に該当しないと取り扱っている実例があることも考慮されました。
「取引価値の有無」についても、排出事業者が自ら利用する場合には個別用途に対する利用価値の観点から判断すべきとし、市販されているボイラーで燃料として利用可能である点から、利用価値を肯定しました。また「事業者の意思」も、実際に熱源として利用されている事実から、適切に利用する意思があると認定されました。
これらの検討を踏まえ、裁判所は本件木くずは廃棄物処理法上の「廃棄物」には該当せず、したがってX社のボイラーは「産業廃棄物処理施設」にも該当しないとし、これを前提とした許可取消処分は違法であると判断しました。
この判決は、廃棄物該当性の判断について非常に具体的な分析を示しており、特に排出事業者が自社で発生した物を利用する場合の判断基準として参考になります。近年の排出抑制や資源循環の要請が高まる中、自社資源の循環的利用を促進する上でのネックとなる廃棄物該当性の問題に一定の指針を示した重要な判例といえるでしょう。
本稿ではより詳しく解説していきます。
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