INDUST2023年9月号に「行政手続きと廃棄物処理法」が掲載されました。

全国産業資源循環連合会(全産連)の月刊誌『INDUST』に
芝田麻里が2017年から「産業廃棄物フロントライン」を連載しています。

2023年9月号に「行政手続きと廃棄物処理法」が掲載されました。
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前回まで、欠格要件について何回かに分けて見てきましたが、今回は行政手続きの重要性と行政指導の法的位置づけについて解説します。

行政処分とは「法令に基づき私人の意思にかかわらず、行政庁が一方的に自らの判断に基づいて私人の具体的な権利義務関係や法律関係を決定し、私人を法的に拘束する行為」です。廃棄物処理業で関係が深い行政処分には、許可処分、不許可処分、改善命令、業務停止処分、措置命令、許可取消処分などがあります。

行政処分は私人の意思とは関係なく一方的に法的効果を生じさせるため、不利益な行政処分に対して争う手段が保障されています。具体的には行政不服審査制度や行政訴訟が用意されています。一方、行政指導は法的拘束力を持たない事実上の行為とされるため、これに対する不服申立て手段は認められていません。しかし、実際には行政指導が事実上の拘束力を持つことが少なくありません。

行政指導とは「行政機関がその任務または所掌事務の範囲内において一定の行政目的を実現するため特定の者に一定の作為または不作為を求める指導、勧告、助言その他の行為であって処分に該当しないもの」と行政手続法で定義されています。行政手続法は行政指導について、以下のルールを定めています。

第一に、行政指導は「あくまでも相手方の任意の協力によってのみ実現されるもの」です。第二に、行政指導に従わなかったことを理由として不利益な取扱いをしてはなりません。第三に、事業者が行政指導に従う意思がない旨を表明したにもかかわらず当該行政指導を継続してはなりません。

また、行政は権限がない行政指導をしてはならず、行政指導の趣旨・内容・責任者を明確に示すべきです。さらに行政指導の根拠となる法令等を示すべきであり、事業者の求めがあれば根拠法令等を記載した書面を交付しなければなりません。事業者は行政指導が法の要件に適合しないと判断するときは、行政指導の中止等を求めることができます。

行政手続法は不適切な行政指導によって国民(事業者)の権利行使が妨げられる状況を防ぐため、行政指導が適切に行われるよう細かく規定し、行政権の恣意的行使を規制しています。憲法上、国民は職業選択の自由を有しており、廃棄物処理業を選択することもその一内容として保障されています。廃棄物処理法が許可制を採用しているのは、職業選択の自由を他の人権との調整のために必要な範囲で制約するものです。

事業者は行政から「指導」を受けたとき、それが任意の「行政指導」なのか、従うことが必要な法令上の要請なのかを判断するのが難しい場合があります。そのような場合は専門家に相談し、行政に対して指導の根拠条文等を確認し書面で回答を求めるなど、自己の権利を守るための行動をとる必要があります。

行政手続法は事業者の味方です。事業者は自身の権利を守る意識をもって行政手続法を活用してほしいと思います。行政と事業者の適切な関係構築のためにも、行政手続法の規定を双方がしっかりと理解することが重要です。

本稿ではより詳しく解説していきます。

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