欠格要件の「第一類型」(欠格要件シリーズ②)

欠格要件の「第一類型」とは、
著者によるネーミングですが、
「罰金刑以上の刑罰受けると欠格要件に該当する類型」を「第一類型」とします。

これに対して「禁錮刑以上の刑罰を受けて初めて欠格要件に該当する類型」のことを
「第二類型」とします。

※「禁錮刑」とは、懲役刑と同様に受刑者を刑事施設に収容する刑罰であるものの
刑務作業が義務付けられていない刑罰のこと

「第一類型」に該当する法令

「第一類型」に該当するのは以下の法令です。
⑴ 廃棄物処理法
⑵ その他の環境法令
 ① 大気汚染防止法
 ② 騒音規制法
 ③ 海洋汚染防止法
 ➃ 水質汚濁防止法
 ⑤ 悪臭防止法
 ⑥ 振動規制法
 ⑦ 特定有害廃棄物輸入規制法
 ⑧ ダイオキシン規制法
 ⑨ PCB規制法
⑶ 暴力行為等処罰に関する法律
⑷ 暴力団対策法
⑸ 一部の刑法犯
 ① 傷害罪(刑法204条)
 ② 現場助成罪(刑法206条)
   *「現場助成罪」とはケンカが行われている現場で囃し立てるなどの行為をいいます。
 ③ 暴行罪(刑法208条)
 ➃ 凶器準備集合罪(刑法208条の2)
 ⑤ 脅迫罪(刑法222条)
 ⑥ 背任罪(刑法247条)

「第一類型」の趣旨

 「第一類型」に該当する法律に違反した場合には、
罰金以上の刑罰(判決)を受けただけでアウト=欠格要件に該当します。
 罰金とは、1万円以上の刑罰のことをいいますから(刑法12条1項)、
委任契約書の法定記載事項を欠くとして、罰金5万円の判決が出たとしても、
欠格要件に該当し許可が取り消されますので、「軽くて済んだ」とはいえません。

 なぜ、この類型に該当する犯罪については、
罰金以上の刑罰を受けただけでも欠格要件に該当する、とされたのでしょうか。

 「第一類型」は、廃掃法令その他の環境法令、暴力団対策法等、
とくに廃棄物処理法が違反を警戒している犯罪類型です。
 「違反を警戒」しているとは、「違反を許さない」、という意味と、
「違反しやすい誘因がある」ことの両方の意味があります。

「第一類型」⑸にあたる「刑法犯」

 上記のとおり、①傷害罪、②現場助成罪、③暴行罪、
➃凶器準備集合罪、⑤脅迫罪、⑥背任罪がこれにあたります。

 ①〜⑤までの犯罪を見ると、乱暴なイメージが浮かぶと思います。
このような犯罪の種類を「粗暴犯」と呼びますが、
粗暴犯は反社会的勢力と関係があるかもしれないことを警戒し、
粗暴犯に該当することによって罰金以上の刑罰を受けた場合には
欠格要件に該当し許可が取り消されます。

背任罪と反社会的勢力

では「背任罪」は反社会的勢力とはどのような関係があるのでしょうか。
刑法上の「背任罪」とは、イメージとしては、
ある人(法人)との信頼関係を利用し、その地位を利用し、
その人(法人)の信頼を裏切り、その人(法人)に損害を与える犯罪です。
 例えば、会社の会計担当の取締役が、会社から信頼されている地位を利用して
会社に入金されるべき契約金を自身の口座に振込ませるなどの行為です。

 一般的には、背任罪と反社会的勢力との関係は、イメージしにくいかもしれません。

 かつて、会社に対してゆすりをかけるために株式を取得し、
株主として株主総会等で威圧的発言等を繰り返し、
それらを避けるために会社から金品を要求する
いわゆる「総会屋」が横行したことがありました。

 会社としては、「総会屋」に株主総会で騒ぎを起こされては困るため、
役員が、総会屋に対して、前もって金品を渡すなどの行為をすることがありました。

 しかし、総会屋に、株主総会で暴れないでおとなしくしていてもらうために
金品を渡すことは違法です。

 つまり、役員は、会社に対する忠実義務、善管注意義務を
負っているにもかかわらず、義務に違反して、会社の財産を
反社会的勢力に渡す(払う)という違法な行為を行っているということであり、
これが「背任罪」にあたるとされたのです。

「蛇の目ミシン事件」

 背任罪として有名な事件として、「蛇の目ミシン事件」があります。
「蛇の目ミシン」とは、あの有名なミシンメーカーのことです。

「蛇の目ミシン事件」とは、
蛇の目ミシン社(以下、「J社」といいます。)の株式を大量に取得したAが
J社の株式を暴力団に売却するなどとしてJ社の取締役Yらを脅迫し、
Yらが「融資」の名目で約300億円という巨額の資金をAに交付した事件で、
Yらの行為が会社に対する取締役としての役員の義務に反するとして
責任を問われた事例です。


 Yらの行為については、
東京高裁平成12年3月31日において刑事責任(背任罪)が認められていましたが、
J社の株主によって取締役としての責任が問われていた民事訴訟において(株主代表訴訟)、
最高裁平成18年4月10日判決は取締役としての任務違反であるとして責任を認めました。

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